聖パトリック大隊

聖パトリック大隊の歴史と意義

聖パトリック大隊（Saint Patrick's Battalion）は、1846年から1848年にかけての米墨戦争で、メキシコ軍の一部として活動した軍隊です。この部隊は主にアイルランドのカトリック教徒で構成され、彼らの存在は多くの人々にとって裏切り者として認識されつつも、メキシコでは英雄視されています。大隊は、アイルランド人、ドイツ人、スイス人などのカトリック教徒で構成され、特にアイルランドからの移民が多かったことが特徴です。この部隊の結成には、当時のアイルランドの厳しい経済状況やジャガイモ飢饉が重要な背景としてあります。

歴史的な文脈

米墨戦争中、聖パトリック大隊のメンバーは、自国の経済的苦境から逃れるためにアメリカに渡った移民たちでした。1845年のジャガイモ飢饉以前から、アイルランド人の多くはアメリカ東海岸の港から到着していました。戦争中、彼らは不足していた戦力を補う目的で急遽徴兵されることとなり、メキシコ側に参加しました。彼らの決断は、宗教や文化的背景に結びつき、またアメリカ軍の兵士によるカトリック教徒への差別的な取り扱いも影響を与えたとされています。

軍事活動

聖パトリック大隊は、当初メキシコのLegión de Extranjeros（外国人部隊）として活動を開始しました。1846年9月21日には、モンテレーの戦いで公式にメキシコ軍として参加し、優れた砲撃技術を発揮しました。特にジュータ・ビスタの戦いでは、敵軍に多大な損失を与えました。この戦いで、部隊は約800名に達し、メキシコ国への祝福を示す緑の旗が掲げられました。

ただし、戦闘が続く中で部隊の人数は減少し、1847年には聖パトリック大隊は再編成され、「パトリシオス外国人部隊」と改名されました。これにより、彼らはさらに多くのヨーロッパの志願兵を受け入れるようになりました。チュルブスコの戦いでは、アメリカ軍に対する激しい抵抗を試みましたが、彼らの数は少なかったため、持ちこたえることには限界がありました。

裁判と処刑

戦争が終結し、聖パトリック大隊のメンバーはアメリカ陸軍に捕らえられ、裏切り者として処罰されました。敵側に加担したとして、72名が脱走の罪で告発され、軍事法廷で裁かれました。裁判は形式的なものであり、弁護士もつけられず、結局30名が絞首刑にされるという厳しい判決が下されました。特に注目すべきは、彼らの判決が米墨戦争の多くの脱走兵とは異なり、特に厳罰であった点です。

聖パトリック大隊の遺産

聖パトリック大隊が果たした役割は、今日でもメキシコとアイルランドの文化に深く根付いています。特に処刑された日である9月12日は、多くの人々によって追悼の日として記念されています。この部隊を讃えるために、メキシコ各地では、彼らにちなんだ名称の学校や通りが存在しており、また1997年には150周年の記念行事が行われました。さらに、2004年には聖パトリック大隊に敬意を表した彫像がアイルランド政府に寄贈され、両国の友好関係を象徴するものとなっています。

聖パトリック大隊は、歴史の中で忘れ去られることなく、今でも多くの人々にその名を語り継がれています。彼らの存在は、戦争や移民の歴史を考える上で重要な要素であり続けています。

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