聖ヘオルヒー教会 (ザヴォリチ)

ザヴォリチ村の聖ヘオルヒー教会：歴史と焼失、そして再建への道

ウクライナのキーウ州ブロヴァルイ地区に位置するザヴォリチ村には、かつて美しい木造の聖ヘオルヒー教会が立っていました。この教会は、ウクライナ正教会（モスクワ総主教庁系）に属し、その歴史は17世紀にまで遡ります。

歴史

1665年、村には聖バルバラを祀る木造教会が建てられました。その後、1873年には聖ヘオルヒーを祀る教会が新たに建立されました。この教会は、その美しい木造建築と歴史的価値から、地域住民にとって重要な存在でした。

しかし、20世紀に入り、教会は困難な時代を迎えます。1918年には、ボルシェビキによって司祭が殺害され、1935年には礼拝が閉鎖され、教会は穀物倉庫として利用されました。その後、1968年に礼拝が再開されましたが、修復の際に元の絵画のほとんどが失われてしまいました。それでも、イコノスタシスの建設や教会の塗り直しなどの修復作業が進められ、一部のフレスコ画が保存されました。

1998年から2012年にかけては、大規模な修復が行われ、教会は再びその美しさを取り戻しました。2022年時点では、ペトロ・コチュク大司祭が教会の司祭を務めていました。

2022年ロシアのウクライナ侵攻による焼失

2022年2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻が始まりました。ロシア軍はキーウへ向けて南下し、その進路上にあったザヴォリチ村も攻撃を受けました。同年3月7日、聖ヘオルヒー教会はロシア軍の砲撃によって破壊されました。

目撃者の証言によると、ロシア軍は教会のドーム部分を特に狙って砲撃し、周囲のフェンスには機関銃の銃撃を加えました。この攻撃により、教会堂は火災で全焼しましたが、幸い死傷者は出ませんでした。

ロシアのプーチン大統領は、この侵攻を正当化する理由の一つとして、ウクライナにおけるウクライナ正教会（モスクワ総主教庁系）の迫害を挙げていました。しかし、皮肉にも、この教会を含む多くのモスクワ総主教庁系の教会がロシア軍によって破壊されました。

再建への動き

教会の焼失後、地元住民と教会関係者はすぐに再建に向けた動きを始めました。4月初旬には、焼失跡地に仮の教会堂が建てられ、復活祭の週に合わせて最初の公祈祷が行われました。

この迅速な再建は、地元の人々の信仰とコミュニティへの強い結びつきを示すものです。破壊された教会は、人々の心のよりどころとして、再びその役割を果たし始めています。

ユネスコの保護

2022年4月12日、ユネスコは聖ヘオルヒー教会を、ロシアのウクライナ侵攻によって損害を受けた90のウクライナ文化遺産リストに加えました。これは、1954年ハーグ条約に基づき、文化財の保護を目的とした措置です。ユネスコは、文化遺産の破壊を監視し、意図的な破壊には戦争犯罪を含む責任を追及すると警告しています。

聖ヘオルヒー教会は、その歴史的、文化的な価値から、ウクライナだけでなく世界にとっても重要な遺産です。その焼失は、武力紛争が文化遺産にもたらす悲劇を象徴する出来事であり、国際社会による文化財保護の重要性を改めて認識させるものとなりました。

まとめ

ザヴォリチ村の聖ヘオルヒー教会は、長い歴史の中で、人々の信仰の中心として、また地域コミュニティの象徴として存在してきました。2022年のロシアによる侵攻で焼失するという悲劇に見舞われましたが、地元住民と教会関係者の努力によって、再建の歩みが進められています。この教会は、単なる宗教施設を超え、ウクライナの文化遺産としての価値も高く、ユネスコの保護のもと、将来にわたってその重要性が語り継がれていくでしょう。

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