聖三位一体の礼拝 (デューラー)

『聖三位一体の礼拝』（または『ランダウアー祭壇画』）は、ドイツ・ルネサンスの巨匠アルブレヒト・デューラーが1509年から1511年にかけて制作した油彩の祭壇画です。デューラー最後の祭壇画であり、聖三位一体を主題とした壮大な作品として知られています。この作品は、1585年に神聖ローマ皇帝ルドルフ2世によって購入され、18世紀にはウィーンの宗教宝物庫に収められました。その後、1780年にウィーンのギャラリーに移され、現在は美術史美術館に所蔵されています。

制作の背景と構成

本作は、ニュルンベルクの商人マットイス・ランダウアーから、彼が設立した慈善施設「12人寮」の礼拝堂のために依頼されました。礼拝堂は聖三位一体と諸聖人に捧げられており、その祭壇画として、デューラーは聖アウグスティヌスの「神の国」の概念を基に構成しました。

祭壇画は、上部の彫刻が施された枠も含めた全体で一つの作品として捉えられます。枠の上部には「最後の審判」が浮き彫りで表現されています。絵画部分は、画面中央上部に聖霊（鳩）、父なる神、神の子イエス・キリストが垂直に並び、三位一体を表しています。彼らを礼拝するように、画面上部右側には福音史家ヨハネと旧約聖書の人物たち、左側には聖母マリアと諸聖人が配置されています。画面下部には、ローマ教皇、神聖ローマ皇帝、そして寄進者であるマットイス・ランダウアー（一番下の列の左側）、彼の義理の息子ヴィルヘルム・ハラー（右側の鎧を着けた騎士）など、神に選ばれた者たちが描かれています。また、画面右下隅には、デューラー自身がこの場に立ち会う証人のように、銘板と共に描かれています。

様式と影響

デューラーは、イタリアの壮麗な祭壇画の形式を参考にしながらも、自身の北方的な作風を色濃く反映させています。人物の配置による空間構成は、ルネサンス期の巨匠ラファエロの作品を彷彿とさせますが、画面全体に鮮やかな色彩を散りばめた構成は、デューラー独自の表現と言えるでしょう。この作品は、デューラーの卓越した画力と、複雑な神学的なテーマを視覚的に表現する能力を示すものとして、美術史的に非常に重要な作品とされています。

デューラーの北方ルネサンス様式とイタリアのルネサンス様式の融合が見られ、デューラー独自の芸術性を堪能できる作品です。

美術史美術館の本作のサイト (英語)

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