聖書神学

聖書神学

聖書神学（せいしょしんがく、英：biblical theology）は、キリスト教神学の重要な分野ですが、その根底には聖書そのものの研究があります。この学問は、聖書の原文を読み解くことに始まり、そこから得られる意味を深く探求することを目的としています。具体的には、聖書のメッセージや教義を歴史的背景やテーマに沿って整理し、明確に提示していきます。聖書神学は旧約と新約に分かれ、それぞれが持つ神学的思想を明らかにすることに努めます。

歴史的背景

中世

中世の時代、聖書の解釈は主に寓喩的なアプローチに依存しており、教義が聖書研究を支配していました。この時期には聖書神学が成長する余地は少なかったため、教会の教えに対する従属的な姿勢が続いていました。

宗教改革

宗教改革が進む中、改革者たちは中世の教会の教義が聖書の教えと必ずしも一致していないことを指摘し、聖書を直接の資料として扱う必要性を唱えました。原語での読み込みや歴史的、文法的な解釈が重視されるようになり、聖書神学の萌芽が見られました。

18世紀

啓蒙主義や合理主義の影響を受けた18世紀では、聖書は他の歴史文書と同じように客観的に研究されるべきとされました。1787年にJ・P・ガープラーは、聖書神学と教義学の明確な違いを主張し、このことが聖書神学の発展への第一歩となりました。

19世紀

19世紀に入ると、ガープラーの提唱が「歴史的・批評的」研究法として具体化され、これにより聖書は宗教的偏見から解放されることが期待されました。これに伴い、旧約と新約の統一性が揺らぎ、聖書が人間の著作物として捉えられる時代を迎えました。

20世紀初頭

20世紀に入ると、特に1913年にブセットが著した『キュリオス・クリストス』において、イエスの宗教的な位置づけが議論されました。また、A・シュヴァイツァーによる研究では、史的イエスの姿はほとんど理解できないという結論に達しました。この時期には、聖書神学の再評価が行われ、神学視点からの旧約研究の重要性が再認識されるようになりました。

1940年代から50年代にかけては、ドイツやスイス、イギリス、アメリカなどで多様な聖書神学に関する考察が行われました。ルドルフ・ブルトマンやE・ケーゼマン、H・H・ロウリなどの学者たちがその代表と言えます。これらの研究は「聖書神学運動」と呼ばれ、福音主義の視点からも多くの著作が発表されました。G・ヴォスやエドワード・ヤングの研究がその一環として挙げられ、これらは歴史的・批評的手法を採用する学者とは一線を画すものでした。

聖書神学は、宗教的な教義や信念の基礎を聖書に求めつつ、歴史的文脈に基づいて探求する学問です。その発展の歴史は、信仰の在り方や解釈の変遷をも示しており、現在でも重要な研究対象となっています。

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