聖母子 (ペルジーノ)

ピエトロ・ペルジーノ作『聖母子』について

盛期ルネサンスの巨匠、ピエトロ・ペルジーノが1500年頃に制作した油彩画『聖母子』（伊: Madonna col Bambino, 英: Madonna and Child）は、聖母マリアと幼子イエス・キリストを描いた宗教画の傑作です。現在は、アメリカ合衆国ワシントンD.C.のナショナル・ギャラリーに所蔵されています。

作品の特徴

この作品では、聖母マリアが深紅のドレスに青いローブをまとい、膝の上に幼いイエスを抱いています。マリアは、優美な弧を描く眉、まっすぐな鼻筋、そしてピンク色の小さな唇を持ち、青いリボンで髪をまとめています。彼女は、身体をわずかに左に傾け、静かに息子を見つめています。幼子イエスは裸で、母子ともに滑らかな桃色の肌をしています。マリアは、右手でイエスを支え、もう一方の手はいつでも動かせるようにイエスの足の近くに添えています。画面左側から差し込む穏やかな光が、母子の姿を優しく照らし出しています。

背景には、ウンブリア地方の典型的な風景が広がります。青く霞んだ山々、まばらに生える木々、そして遠くには建築物や教会の尖塔を持つ町並みが、淡い青空の下の地平線に沿って描かれています。この遠景が、作品に奥行きと静けさをもたらしています。

幼子イエスの造形もまた繊細です。薄茶色の瞳、小さく尖った鼻、ピンク色の小さな唇、そして幼児らしいふっくらとした頬と体つきが、彼の愛らしさを際立たせています。イエスは、何かを熟慮するかのようなポーズで手を置き、肩越しに画面左を見つめています。

聖母の姿は、ロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵の『チェルトーザ・ディ・パヴィアの多翼祭壇画』中央の板絵や、『聖母子と天使』の聖母像と類似しており、ペルジーノの聖母像の典型的な表現がここにも見られます。幼子の肌の色は聖母の衣服の明るい色と対照的で、絵画全体に心地よい明るさをもたらしています。この作品は、宗教的なテーマと母子の愛情という普遍的なテーマが融合し、調和と親密さの感覚を生み出しています。

遠くの地平線は聖母の肩のあたり、画面の約4分の3の高さに位置しています。風景は遠くに向かって消え、大気による効果を空中遠近法で再現しており、ペルジーノの卓越した技術が示されています。

保存状態と来歴

作品の保存状態は完全とは言えません。特に幼子キリストの部分は表面が摩耗しており、後世による修復の跡も見られます。

絵画の制作経緯やその後の来歴については、不明な点が多く残されています。しかし、イタリアのヴィッラフランカのマルケージ家が所有した後、マドリードのラ・ロマーナ侯爵の手に渡り、ビジャマジョール侯爵に遺贈されたことがわかっています。その後、絵画はデュビーン・ブラザーズ社に売却され、アメリカの投資家クラレンス・マッケイの手に渡りました。1936年には、サミュエル・H・クレス財団によって購入され、1939年にナショナル・ギャラリーに寄贈されました。

まとめ

ピエトロ・ペルジーノの『聖母子』は、ルネサンス美術の美しさと宗教的感情が融合した傑作です。聖母マリアと幼子イエスの愛情に満ちた姿は、観る人の心を温かく包み込みます。ナショナル・ギャラリーを訪れた際には、ぜひその魅力を堪能してください。

参考資料

『西洋絵画作品名辞典』黒江光彦監修、三省堂（1994年）
ナショナル・ギャラリー公式サイト, ピエトロ・ペルジーノ『聖母子』

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