聖母子と二人の天使 (ヴェロッキオ)

聖母子と二人の天使

アンドレア・デル・ヴェロッキオ作『聖母子と二人の天使』、または『授乳の聖母』は、15世紀ルネサンス期のフィレンツェで制作された油彩画です。この作品は、聖母マリアが幼子イエスに授乳する場面を、二人の天使を伴って描いています。ヴェロッキオの作品でありながら、その構図はフィリッポ・リッピの同名作品から強い影響を受けています。

作品の特徴

絵画の中心となるのは、聖母マリアと幼子イエスです。二人の天使が幼子キリストを抱え上げ、聖母マリアに近づけています。マリアは授乳のために衣服を開き、キリストは両手を伸ばし、その小さな右手でマリアの左手の小指を優しくつかんでいます。この場面で最も注目すべきは、聖母子が見つめ合う視線です。ヴェロッキオは、この視線を通して二人の間の深い愛情を表現しています。

聖母マリアは、天使たちと同じく豪華な衣装を身にまとっています。その衣装は金糸で刺繍され、貴重な宝石がふんだんに用いられています。マリアの金髪は後頭部でまとめられ、半透明のヴェールで覆われています。画面左端の天使は、花輪の冠をかぶり、光沢のある薄紫色のローブを身に着けています。ローブの袖には金糸が織り込まれています。もう一人の天使は、鑑賞者の方を見つめているのが特徴的です。

背景には、多彩な色彩の大理石を用いた高い壁で囲まれた中庭が描かれています。この中庭は、聖母マリアの処女性を象徴する「ホルトゥス・コンクルスス（壁で囲まれた庭園）」を表現していると考えられています。

構図と影響

この絵画の構図は、フィリッポ・リッピの『聖母子と二人の天使』に強く影響を受けています。リッピの作品は15世紀のフィレンツェで非常に人気があり、本作品を含む多くの模倣作品が制作されました。また、サンドロ・ボッティチェッリの同時期の作品『聖母子と二人の天使』や、フィリッポ・リッピの模倣者による同名の作品とも類似性が指摘されています。

ヴェロッキオの特徴

この作品には、ヴェロッキオが彫刻家、金細工師として培った技術と特徴がよく表れています。例えば、鑑賞者を見つめる天使の顔は、ヴェロッキオの彫刻『ダヴィデ像』のダヴィデの細いアーモンド型の目とよく似ています。また、背景の壁の向こうに描かれたヤシの木は、植物のオブジェのように見え、金細工の彫刻を想起させます。聖母子の頭上に描かれる光輪も、単なる光の輪ではなく、純金製の皿のように表現されています。

来歴

この絵画は、もともと美術収集家ウォルター・ダベンポート・ブロムリーのコレクションに含まれていました。その後、オーストラリア出身の美術収集家ジョージ・ソルティングの手に渡り、彼の死後、1910年にロンドンのナショナル・ギャラリーに遺贈されました。

帰属

長年、この作品はフィレンツェ派の画家によるものと考えられていました。また、リッピの聖母画に影響を受けた作品として、ボッティチェッリの初期作品であるとも考えられていました。近年になって、ようやくヴェロッキオの作品であると認められるようになりました。1961年に美術館のキュレーターであるマーティン・デイヴィスが、この作品の様式がヴェロッキオに近いことを指摘しましたが、当時は品質があまり高くないと判断されました。しかし、2009年に汚れたワニスが除去された後、暫定的にヴェロッキオの作品として帰属されました。

ギャラリー

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脚注

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外部リンク

* ナショナル・ギャラリー公式サイト, アンドレア・デル・ヴェロッキオ『聖母子と二人の天使』)

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