聖獣配列

『聖獣配列』について

松本清張による長編小説『聖獣配列』は、特異な環境に生きる女性と政治的陰謀が交差する緊迫したクライム・サスペンスです。この作品は、1983年から1985年にかけて『週刊新潮』で連載され、1986年1月に新潮社から刊行されました。物語の舞台は、華やかな銀座のクラブ「シルバー」と日米両国の権力者たちとの交錯に設定されています。

あらすじ

物語の主人公は、銀座のクラブ「シルバー」のママ、中上可南子です。彼女は、顔馴染みの議員秘書・倉田重三郎を通じて、アメリカ合衆国大統領ジェームス・バートンの来日を知らされます。しかも、バートンは可南子との再会を望んでいるというのです。彼女は驚きながらもオファーを受け入れ、バートンと迎賓館で密かな一夜を共にします。その後、目覚めると彼は不在で、廊下を歩く彼と日本の首相・磯部の姿を偶然撮影してしまいます。

しかし、この出来事をきっかけに、可南子の運命は一変します。自宅への襲撃を受け、彼女は自分が巻き込まれた危険な潮流を理解し始めるのです。可南子は、撮影したネガを武器に大統領と交渉し、日米首脳の秘密会談の証拠を握ることで、交渉を有利に進める計画を立てます。

物語の展開

可南子はバートンの行き先を追い、ロンドンに向かいます。再度の襲撃を受けながらも、彼女は大統領側近秘書のアーサー・ジェフスンと接触します。彼との交渉を経て、金銭的な援助を引き出すための足がかりを得ることに成功し、スイスのホテル会社社長・ワルター・シュルツの支援を得て送金ルートを確立します。

しかし、秘密会談に関わった人々が次々と死体として発見される事態に進展し、可南子は自らの身の安全と同時に、新たな国際的陰謀の存在を知ることになります。元々は銀座のクラブに身を置く一女性が、世界の権力闘争に引き込まれていく様子が緊張感を持って描かれます。

登場人物

作品には魅力的なキャラクターが多く登場します。中上可南子は、銀座の「シルバー」で支店を懸命に守る女性であり、アーサー・ジェフスンはバートン大統領の秘書として彼女の活躍を陰で支えます。また、政治的なキャラクターも多数登場し、作品に深みを加えています。

この小説は、単なる娯楽作品だけでなく、当時の日本とアメリカの政治的背景を反映した作品でもあります。作品中の事件は、実際の歴史的な出来事を意識した内容であり、読者に深い考察を促します。

まとめ

『聖獣配列』は、松本清張の作品の中でも特に評価が高く、その巧妙なストーリー展開とリアリティのあるキャラクターが魅力的です。彼女の人生は、銀座のクラブという華やかな舞台の裏に潜む闇の世界へと導かれていきます。この作品を通じて、読者は魅惑的でありながらも危険な人間関係と国家への探求、そして真実を追い求める人間の姿を見ることができるでしょう。

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