肝煎

肝煎（きもいり）

「肝煎」とは、他者の世話をしたり、二者の間を取り持つ役割を指す言葉です。この表現の由来は、心を焦がして神経を使う行為から来ており、転じて、人事や配役などを上司や監督の特別な希望によって実施することを意味するようになりました。また、「肝入り」とも書かれることがあります。

江戸幕府の職制においては、同じ職掌の中で支配役または世話役を指して用いられました。この役割には高家肝煎や寄合肝煎といった具体的な名称が存在し、江戸時代の特定の社会構造において重要な役割を果たしていました。特に、高家は武士の中でも特に地位の高い者を指し、その中での肝煎は、重要な調整役としての責任があったことを示しています。また、寄合肝煎は町や村の代表者としての役割を担っていました。

さらに、肝煎は江戸時代の村や町の代表者を指す際にも用いられ、庄屋や名主、町名主などの役職名と関連付けられました。これらの人々は地域社会における重要な存在であり、住民と幕府との間をつなぐ橋渡し役を果たしていました。こうした代表者は、地域の意見や希望を幕府に届ける重要な役割を担っており、コミュニティの一体感を築くために尽力していました。

明治時代に入ると、「肝煎」という用語は日本海軍の官職にも使用されました。具体的には、明治4年から明治6年にかけての期間において、軍艦や屯営内で違反行為を警察する役割を指していました。これにより、肝煎は軍の規律や安全維持に寄与する重要な役職であったことがわかります。この役職には下士官や伍長といった階級が関与していたことから、この時期の軍隊においても肝煎は特別な役割を持っていたことが理解できます。

総じて、「肝煎」という言葉は、さまざまな歴史的文脈で用いられ、世話や調整の象徴としての重要な地位を占めてきました。江戸時代の社会構造や明治時代の軍制における役割を通じて、他者を助けることの意義と責任を示す言葉であることが特徴的です。

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