肥満嗜好

肥満嗜好（ひまんしこう）についての詳細

肥満嗜好、英語ではfat fetishismとは、肥満体型の人に対して性的な魅力を感じる性的フェティシズムの一種です。この嗜好は、一般的に「デブ専門」や略称の「デブ専」として広く知られています。

歴史的背景

肥満は人類の歴史において、飢饉からの防御手段として貴重なエネルギー源とされてきました。また、肥満は一部の文化圏においては富や繁栄の象徴としても受け入れられていました。例えば、かつての中国の唐では、理想の女性像は「濃麗豊肥（豊かに太った美人）」とされ、著名な楊貴妃もその代表的存在です。西洋でも、ルノワールといったアーティストが太った女性を美しく描いた作品を残しています。

しかし、近代に入ると、生活水準の向上に伴い、豊かな食生活によって肥満がもたらされる体型が否定的に捉えられるようになりました。マスメディアの影響もあり、スリムな体型がもてはやされ、痩せた人々が主流となったため、肥満体型に惹かれることは一種の特異性として認識されるようになりました。

社会的影響

このような痩身至上主義の影響は、拒食症や過度なダイエットによる健康被害が報告される一因ともなっています。実際、「サイズ・ゼロ」と呼ばれる極端に痩せたモデルのファッションショー参加が拒否された事例も存在します。その反動として、豊満な体型のモデルたちが注目されることも増えてきました。例えば、アメリカの『PLAYBOY』誌では、プラスサイズモデルが人気を博しています。

日本でも、ファッション雑誌『CanCam』では、太めの女性を「ぷに子」と愛称で呼び、可愛い存在としてエンカレッジしています。この雑誌では、身長155cmで体重52〜64kgの女性を「ぷに子」として特集し、これは昔の美人像とも重なる部分があります。実際、楊貴妃の身長と体重に近い数字です。

違いと共通点

また、「デブ専」と「ぽっちゃり好き」という用語が使われることもありますが、両者の間には明確な違いは少ないとされます。最近のアメリカでは「スリム」という言葉が必ずしも称賛されなくなっており、むしろ、侮蔑的に捉えられるケースさえあります。これは、良い体型の基準が曖昧になりつつあることを示しています。

有名人に見る肥満嗜好

興味深いことに、有名人における肥満嗜好の一例として西郷隆盛が挙げられます。彼は、豚のように肥満していたことから自身の恋人を「豚姫」と呼び、これが茶屋で歌舞伎の題材としても取り上げられました。こうした歴史的背景からも、肥満嗜好は単なる流行やトレンドに留まらず、文化的な深みを持つテーマであることがわかります。

このように、肥満嗜好は一つの文化的現象であり、美の基準や社会の価値観の変遷と密接に関連しています。それは、単に嗜好だけでなく、歴史、社会、文化が交差する複雑なテーマであるといえるでしょう。

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