背徳小説

背徳小説シリーズ

『背徳小説』（はいとくしょうせつ）は、イタリアで制作された一連のエロス映画シリーズを指します。1992年に第一作『背徳小説』が、1994年に第二作『背徳小説 第二章』が、そして2004年に第三作『背徳小説 完熟編』がそれぞれ発表されました。特に初期二作は、「カリギュラ」などでセンセーションを巻き起こしたティント・ブラスが監督を務め、その独特な官能世界を描き出しています。これらの作品は、人間の秘められた欲望や、倫理的に問題を含むとされる関係性を主要なテーマとしています。

各作品概要

背徳小説（1992年）

シリーズの記念すべき第一作は、ティント・ブラスが監督と脚本を手がけました。物語は、青年教授が主人公。彼は自己の内にある性的な衝動に突き動かされ、父の看護人や自身の教え子といった周囲の女性たちとの間で、規範から外れた、ある種の倒錯的な関係を築いていきます。本作では、人間の性的な欲望がもたらす様相と、それに伴う精神的な退廃が、ブラス監督特有の濃密かつ刺激的なタッチで描かれています。官能的なエロスの世界を通じて、人間の深層心理に迫ろうとする姿勢がうかがえます。

劇場公開時には、その過激な性描写ゆえにいくつかのシーンがカットされましたが、その後の映像ソフト化にあたってはノーカット版がリリースされています。ただし、性交シーンにおける性器描写にはモザイク修正が施されています。日本国内における倫理規定に関しては、現在主流となっているブルーレイやDVDは映倫によりR18+（18歳未満禁止）に指定されています。かつてリリースされたLDやVHS、一部の初期DVDには年齢制限の記載がないものも存在しましたが、現在ではソフトの種類にかかわらず、事実上R18+相当の扱いが一般的です。

主要キャストはフランチェスコ・カセール、カタリナ・ヴァシリッサ、フランコ・ブランチャロリ。撮影はマッシモ・ディ・ヴェナンツォが担当しました。

背徳小説 第二章（1994年）

シリーズの第二作も、前作に引き続きティント・ブラスが監督・脚本を手がけています。本作は前作とは異なる物語で、上品な外見とは裏腹に、抑えきれない性的な欲求を抱える人妻ダイアナが主人公です。彼女は際限のない性的な快楽を追い求め、自己の性的な欲望に身を委ねていく日常を送ります。夫の嫉妬ですら、彼女にとっては性的な刺激となり得るほど、その欲望は深く、奔放です。物語は、彼女が特定の性的行為（尻を触られること）に強く固執し、男性たちにそれを求めるようになる様子を追うことで、その飽くなき性への探求を描き出します。この作品もまた、ティント・ブラス監督らしい官能的な世界観が展開されています。

倫理規定については、第一作と同様に現行ソフトはR18+指定となっています。過去には年齢制限の記載がないソフトや、レンタル店独自の判断でR15指定とされていたケースも存在しました。

主要キャストはクラウディア・コール、フランコ・ブランチャロリ。撮影はシルヴァーノ・イッポリティ、音楽はピノ・ドナッジオが担当しています。

背徳小説 完熟編（2004年）

シリーズの第三作は、これまでの二作とは異なり、イタリアの新鋭監督とされるセルゲイ・ド・パルマが監督を務めています。本作は官能ドラマとして位置づけられ、既婚女性の不倫、すなわち背徳的な恋愛関係をテーマに描かれています。内容はシリーズ初期二作の系統を継承しつつも、監督の個性が反映された作品となっています。

主要キャストはアナリサ・モンテゼモーロ、デヴィッド・ペリー、レスリー・テイラー。脚本はD・サルビ、撮影はジョセフ・コンティがそれぞれ担当しました。

シリーズ全体として

この『背徳小説』シリーズは、イタリアのエロス映画の中でも特に人間の内面的な欲望や社会的な規範からの逸脱を描く点で特徴的です。特にティント・ブラス監督作品に見られるような、視覚的な刺激と心理的な探求が融合したスタイルが、シリーズ初期二作においては顕著に見られます。映像ソフトの倫理規定に関しては、時代の変化や流通経路によって取り扱いが異なっていた経緯があることも特筆される点です。

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