胎児性アルコール症候群

胎児性アルコール症候群（Fetal Alcohol Syndrome）

胎児性アルコール症候群（FAS）は、妊娠中に母親が習慣的にアルコールを摂取することにより、胎児に発生する先天性障害の一種です。この症候群は、神経発達の問題を引き起こし、知能にさまざまな影響を及ぼします。特に、妊婦のアルコール摂取量や頻度に応じて、子供に軽度から重度に至る知能障害が現れることがあります。

胎児性アルコール・スペクトラム障害（FASD）

FASは、妊娠中のアルコール摂取による胎児の障害全般を指す「胎児性アルコール・スペクトラム障害（FASD）」という広範な概念の中に位置づけられます。FASDには、FAS以外にもさまざまな障害が含まれており、具体的な症状や状態は多岐にわたります。

発生率と影響

FASの発生率は、約1000出生あたり0.5人程度とされていますが、アルコール依存症の女性から生まれた子供では、その確率が約3分の1に達するとも言われています。また、米国の学校での有病率はおおよそ20人に1人であり、社会的なコストは年間55億ドルにも及ぶとされています。

米国国立薬物乱用研究所（NIDA）の調査によれば、妊娠中の女性の約19%、つまり330万人もの人々がアルコールを摂取していると考えられています。

主な症状と特徴

胎児性アルコール症候群には、いくつかの特有の症状があります。以下はその主な特徴です：

1. 中枢神経系の異常：学習面での遅れ、知的障害、行動の問題（過活動や記憶障害）など。
2. 身体の発育不全：胎児の身長や体重が健常児よりも小さく、妊娠中から低体重が見られることがあります。
3. 特徴的な容貌：具体的には、瞳孔が狭かったり、目の間隔が異なったり、上唇が薄く真っ直ぐだったりすることがあります。小頭症や特異な耳の形状、鼻の小ささも見られることがあります。

原因と予防

FASは、母親が妊娠中にアルコールを摂取することによって引き起こされます。アルコールの種類や摂取量、飲酒の時期などが影響となるため、妊娠中はアルコールの摂取を避けることが非常に重要です。現時点で安全とされる飲酒量は不明であり、少量のアルコールでもリスクは存在します。

また、母親の年齢や栄養状態も影響を与える要因として挙げられます。高齢での妊娠や栄養不足は、FAS児が生まれる可能性を高めます。

予防の重要性

胎児性アルコール症候群は、アルコールを摂取しないことで100%予防可能です。そのため、妊活を考えている女性や妊娠が発覚した女性は、早期に禁酒することが重要です。また、母親が飲酒していた場合でも、早めに飲酒をやめることで、胎児の健康に対するリスクを軽減できます。

まとめ

胎児性アルコール症候群は、妊娠中に飲酒することによって引き起こされる先天性障害であり、その影響は子供の生涯にわたって持続する可能性があります。妊娠を希望する女性は、妊娠前からの飲酒習慣を見直すことが極めて重要です。

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