胸壁筋

胸壁筋：呼吸を支える深層の筋肉

胸壁筋とは、胸郭の内側に位置する筋肉群の総称です。肋骨と肋骨の間に存在し、呼吸運動において重要な役割を担っています。これらの筋肉は、上肢の運動とは直接関係なく、横隔膜とともに呼吸をスムーズに行うための複雑な協調作用を担っています。

胸壁筋は、深層にある筋肉であることから、深胸筋と呼ばれることもあります。外から触れることは難しい筋肉ですが、呼吸をする上で欠かせない、重要な役割を担っています。

胸壁筋を構成する筋肉

胸壁筋は、以下の6つの筋肉から構成されます。それぞれ起始部、停止部、そして呼吸運動における役割が異なります。

1. 外肋間筋 (がいろっかんきん): 肋骨と肋骨の間を斜めに走行する筋肉で、最も表層に位置します。肋骨を上方へ引き上げる作用があり、吸気時に活躍します。肋骨を引き上げることで胸郭を拡大し、肺への空気の取り込みを容易にします。

2. 内肋間筋 (ないろっかんきん): 外肋間筋の深層に位置し、外肋間筋とは逆方向に斜めに走行します。肋骨を下方へ引き下げる作用があり、呼気に関与します。胸郭を縮小させることで肺からの呼気を促します。ただし、安静時の呼気では、内肋間筋の働きはそれほど重要ではなく、むしろ呼気の際の胸郭の弾性的な反動が主体です。

3. 肋下筋 (ろっかきん): 複数の肋骨を飛び越えて走行する筋肉です。内肋間筋と同様に、肋骨を引き下げ呼気を補助する働きがあります。

4. 長肋骨挙筋 (ちょうろっこくきょきん): 肋骨を上方へ引き上げる作用があり、吸気に貢献します。その起始部は、胸椎（胸部の背骨）にあり、肋骨に停止します。

5. 短肋骨挙筋 (たんろっこくきょきん): 長肋骨挙筋と同様に、肋骨を上方へ引き上げる作用を持ち、吸気に関与します。起始部は長肋骨挙筋と近接していますが、作用する肋骨は長肋骨挙筋よりも近接した肋骨となります。

6. 胸横筋 (きょうおうきん): 胸骨と肋軟骨を繋ぐ筋肉で、胸郭を狭める作用があります。呼気に関与すると考えられていますが、その働きは他の呼気筋に比べて比較的弱いと言われています。

胸壁筋と呼吸運動

これらの筋肉は、互いに協調して呼吸運動を制御しています。吸気時には、外肋間筋、長肋骨挙筋、短肋骨挙筋が主に活動し、胸郭を拡大することで肺に空気を吸い込みます。呼気時には、内肋間筋、肋下筋、胸横筋が活動し、胸郭を縮小させて肺の中の空気を排出します。しかし、安静時の呼気は、主に胸郭の弾性的な反動によって行われるため、これらの筋肉の関与は比較的軽微です。激しい運動時など、より多くの呼気を必要とする際には、これらの呼気筋の活動がより顕著になります。

まとめ

胸壁筋は、呼吸運動に不可欠な筋肉群です。それぞれの筋肉が持つ独特の走行と作用によって、胸郭の容積を巧みに調節し、効率的な呼吸を可能にしています。これらの筋肉の機能に異常が生じると、呼吸困難などの症状が現れる可能性があります。

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