能満寺のソテツ

能満寺のソテツ

能満寺のソテツは、静岡県榛原郡吉田町にある能満寺の境内にそびえ立つ、樹齢千年を超えるとも言われるソテツの巨木です。その堂々たる姿は、大阪の妙国寺、静岡市清水区の龍華寺のソテツと共に「日本のソテツ三名木」と称され、1924年（大正13年）には国の天然記念物に指定されました。

歴史と伝説

このソテツは、平安時代の陰陽師として名高い安倍晴明が、1000年頃に能満寺に植えたものと伝えられています。また、このソテツには、以下のような二つの伝説が残されています。

大蛇とソテツの伝説

安倍晴明が大井川を流れてきた巨大な蛇を発見し、手厚く葬りました。その供養のためにソテツを植えたところ、ソテツは大蛇の精を受けて異様な姿に成長したと伝えられています。晴明は、その大蛇の精が人々に害を及ぼさないよう、封じ込めたと言われています。

泣いたソテツの伝説

駿府城にいた徳川家康が能満寺を訪れた際、このソテツの素晴らしさに魅了され、どうしても手に入れたいと所望しました。住職は家康の頼みを断り切れず、ソテツを掘り起こして駿府城へと運び込みました。しかし、その数日後の夜から、毎晩のように城の庭で人の泣き声が聞こえるようになったのです。調べてみると、それはソテツの声で、「能満寺へ帰りたい」と泣いていることが判明しました。家康は祟りを恐れ、ソテツを能満寺へと送り返したと伝えられています。

これらの伝説は、ソテツが地域の人々にとって単なる植物以上の存在であることを物語っています。

現在

現在も能満寺の境内でその雄姿を見ることができ、訪れる人々を魅了し続けています。長い年月を経て、数々の伝説を宿した能満寺のソテツは、自然の力強さと歴史の深さを感じさせてくれる貴重な存在です。

所在地

静岡県榛原郡吉田町片岡

参考文献

三浦直正『静岡県名勝誌』小池直次郎、1903年
静岡県『静岡県治一班 大正14年』静岡県、1926年
浅井治海『樹木にまつわる物語 : 日本の民話・伝説などを集めて』フロンティア出版、2007年
地球の歩き方編集室『御朱印でめぐる東海のお寺』学研プラス、2021年
アド・グリーン『武将と旅する静岡・浜松・富士・伊豆 : 徳川家康と9人のつわものたち』交通新聞社、2023年
齋藤勝裕『ビジュアル「毒」図鑑２５０種 : 身の周りに潜む美しき毒物たち！』秀和システム、2023年

関連項目

遠州七不思議

外部リンク

能満寺のソテツ - 吉田町

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