脱亜鉛腐食

脱亜鉛腐食：真鍮の弱点と対策

黄銅（真鍮）は、銅と亜鉛の合金として古くから親しまれてきた金属材料です。その美しい金色と加工の容易さから、装飾品や金具など幅広い用途に使用されています。しかし、黄銅は特定の環境下で「脱亜鉛腐食」と呼ばれる腐食現象を起こすことが知られています。

脱亜鉛腐食とは？

脱亜鉛腐食とは、黄銅から亜鉛が選択的に溶け出す腐食現象です。黄銅は、亜鉛含有量によって組織が異なり、亜鉛含有量30～40%の黄銅は、銅を多く含むα相と亜鉛を多く含むβ相から構成されています。脱亜鉛腐食は、主にこのβ相で起こります。亜鉛が溶け出すと、赤色のスポンジ状の銅が残り、材料の強度や外観が著しく低下します。

脱亜鉛腐食の原因

脱亜鉛腐食を引き起こす要因は様々です。代表的なものとしては、以下のものが挙げられます。

塩素イオンの影響: 塩素消毒された水道水などに長期間浸されると、亜鉛が選択的に溶け出します。これは、塩素イオンが亜鉛の溶解を促進する作用を持つためです。特に、pHが低い環境ではこの傾向が強まります。
高温・長時間の浸漬: めっき前の脱脂処理などにおいて、高温の脱脂液に長時間浸漬すると、亜鉛イオンが溶出しやすくなります。これは、高温により反応速度が向上し、亜鉛の電解腐食が促進されるためです。
ろう付け: 銅と真鍮をろう付けする場合、銀ロウのフラックスに含まれる成分が亜鉛の溶解を促進し、脱亜鉛腐食が起こる場合があります。これは、フラックスの化学的性質と温度が影響します。

これらの要因は、亜鉛のイオン化傾向の高さ、つまり亜鉛が電子を失ってイオンになりやすい性質と密接に関連しています。

脱亜鉛腐食による影響

脱亜鉛腐食が発生すると、以下の様な問題が生じます。

強度低下: 亜鉛が溶出すると、材料の強度が低下し、破損しやすくなります。
外観変化: 赤色のスポンジ状の銅が現れ、材料の表面が劣化します。
めっき不良・塗装不良: 脱亜鉛腐食によって表面状態が悪くなると、めっきや塗装が剥がれやすくなります。

脱亜鉛腐食対策

脱亜鉛腐食を防ぐためには、以下の様な対策が有効です。

耐脱[亜鉛]]黄銅の使用: ヒ素やスズを微量添加したアドミラルティ黄銅やネーバル黄銅などの耐脱亜鉛黄銅]は、脱[[亜鉛腐食に対する抵抗性を向上させています。
材料組成の最適化: β相の生成を抑えるような材料組成を選択することで、脱亜鉛腐食を抑制できます。鍛造条件の最適化も有効です。
環境制御: 水質管理や脱脂液の温度・時間管理など、腐食環境の改善も重要です。
表面処理: めっきや塗装など、表面に保護層を形成することで、亜鉛の溶出を防ぎます。

脱亜鉛腐食は、黄銅を使用する上で重要な課題です。適切な材料選定や環境制御、表面処理などを通して、その発生を防ぐことが重要です。

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