腐敗選挙区

腐敗選挙区（Rotten Borough）

腐敗選挙区、または懐中選挙区は、19世紀のイギリスの議会制度において、極めて少数の有権者によって支配され、正当性を欠いた選挙区を指します。このような選挙区は、地主や貴族が議席を独占し、友人や親族に議会への代表権を与えることで影響力を確保していました。例えば、かつて繁栄を誇ったオールド・セーレムは、近隣にソールズベリーが建設された後に町として廃れたにもかかわらず、議会には2名の議員を送り続けていました。

歴史的背景

イギリスの「バラ（borough）」という言葉は、特許状によって庶民院に2人の議員を送る権利を与えられた町を意味します。しかし、時間の経過とともに、環境が変化しても選挙区の境界線が変更されなかったため、かつて栄えていた町がその地位を保持し続ける一方で、実際にはほとんど人が住まないような状況が生まれていました。腐敗選挙区の多くは、このように人口が減少し、投票者がほぼいなくなったにもかかわらず、議席を保っていたのです。

19世紀の初めには、これらの選挙区に対する改革の要求が高まりました。特に1832年の改革法により、57の腐敗選挙区が廃止され、新たな人口集中地に議席が配分されるようになったのです。

懐中選挙区（Pocket Borough）

腐敗選挙区と似ている用語に懐中選挙区があります。これは有力な地主が小さな選挙区を自由に支配する状態を指し、選挙結果が地主の意向によって決まるものでした。19世紀半ばまでは秘密投票の制度がなかったため、投票者は地主に逆らうことができず、これが当たり前となっていました。

改革の進展

1867年の改革法は、懐中選挙区を廃止し、選挙区の領域を見直すことを目的としていました。この改革が施行されることで、選挙の公正さが向上し、議会の代表性が確保されるようになりました。

腐敗選挙区を巡る議論

腐敗選挙区の擁護派は、これらの制度が政権に安定をもたらし、政治家を育てる役割を果たしていると主張していました。具体例として、トーリー党政権は腐敗選挙区から多くの議員が選出されていたことを挙げ、制度の維持を訴えていました。

現代における言及

今でも「腐敗選挙区」という言葉は使用され、特にローカルな政治問題を扱う際に引用されます。たとえば、雑誌『Private Eye』には「Rotten Boroughs」というコラムがあり、地方自治の問題を図ります。

芸術作品における脚注

腐敗選挙区はフィクションにも多く登場します。例えば、BBCのコメディ『ブラックアダー』では、有名な腐敗選挙区から当選する話が描かれています。他にも、文学作品では多くのキャラクターが腐敗選挙区を通じて議員に選出される設定がなされています。

まとめ

腐敗選挙区は、政治の代表性や公正さが脅かされる状況を象徴しており、19世紀のイギリスにおける重要な改革の背景となっていました。この歴史を知ることで、現代の政治システムや選挙制度への理解が深まります。

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