腹ペコ野良猫

腹ペコ野良猫：騙し合いとどんでん返しのコメディアニメ

1949年12月24日、[メトロ・ゴールドウィン・メイヤー]より公開された『腹ペコ野良猫』(原題:The Counterfeit Cat)は、アニメーターの巨匠テックス・アヴェリー監督による短編アニメーションです。空腹に駆られた野良猫が、裕福な家のカナリアを狙うことから物語は始まります。しかし、その家の番犬、スパイクの存在が、野良猫の企みを阻みます。

スパイクは飼い主の夫人から、留守中の家の警備を厳重に命じられています。野良猫は、スパイクの目を欺くため、隣家の犬の皮を剥いで被り、スパイクになりすまそうとします。この大胆な計画を実行に移す野良猫ですが、カナリアは簡単には捕まりません。スパイクもまた、単純で欲張りな性格のため、野良猫の策略にまんまと引っかかってしまいます。野良猫が骨を投げ与えるたびに、スパイクはそれを庭に埋めるという奇妙な行動を繰り返します。番犬としての職務は完全に放棄されているのです。

野良猫は、スパイクの気を紛らわせるため、次々と骨を与え、カナリアを捕まえようと試みます。しかし、カナリアもまた賢く、抵抗を続けます。ついにスパイクは野良猫の偽装を見破り、彼を家から追い出しますが、野良猫はスパイクが庭に埋めた骨をすべて持ち去ろうとします。この状況を見て、なんとスパイクは、カナリアと骨を交換しようと野良猫に提案します。交渉は成立しますが、カナリアは骨の入った袋を抱えて逃げ去ります。

結局、野良猫もスパイクも何も得られず、そこに現れたのは、野良猫に皮を剥がされた隣家の犬でした。怒りに燃える犬は、スパイクと野良猫がお互いを責め合う様を見て、ついに我慢の限界に達します。そして、スパイクと野良猫の頭に皮を剥ぎ取り、皮を交換するという、痛快な仕返しをするのです。

この作品は、単純なドタバタ劇だけでなく、社会風刺的な要素も含まれています。欲に目がくらみ職務を放棄する番犬スパイクの姿や、手段を選ばず目的を遂げようとする野良猫の姿は、現代社会の様々な問題を想起させます。

登場キャラクターは個性豊かで、それぞれが魅力的です。単純で欲張りだがどこか憎めないスパイク、抜け目のない野良猫、賢くしたたかなカナリア、そして、無実の被害者でありながら最後に痛快な復讐を果たす隣家の犬など、それぞれのキャラクターが物語を盛り上げます。

『腹ペコ野良猫』は、テンポの良い展開、予想外の結末、そして個性豊かなキャラクターたちが織りなす、何度見ても楽しめる傑作アニメーションと言えるでしょう。日本のテレビ放映では、TBS版『トムとジェリー』の短編として放映され、多くの視聴者を魅了しました。この作品は、アニメーション史においても重要な作品の一つであり、テックス・アヴェリー監督の才能を改めて感じさせてくれます。

もう一度検索