臨床修練指定病院

臨床修練指定病院とは

臨床修練指定病院とは、日本の医療制度において、特別な役割を担う医療機関です。具体的には、日本の医師免許や歯科医師免許を持たない外国籍の医師や歯科医師が、厚生労働大臣の指定に基づき、日本国内で医療行為を行うことを特別に認められた病院を指します。これらの医療機関は、外国人医師等が日本の先進的な医療技術や知識を体系的に学ぶための重要な拠点となります。

臨床修練制度の概要

臨床修練指定病院は、「外国医師等が行う臨床修練に係る医師法第十七条等の特例等に関する法律」という法的な根拠に基づき実施される臨床修練制度の中核を成す存在です。この制度の主な目的は、諸外国からの医師や歯科医師に日本の高度な医療技術を習得してもらい、彼らの母国における医療水準の向上に貢献すること、そして国際的な医療交流を促進することにあります。

この制度の下で臨床修練を行う外国人医師等（臨床修練外国医師・臨床修練外国歯科医師と呼ばれます）は、指定された病院において、経験豊富で適切な指導を行うことができる医師（指導医）の監督のもと、最長で2年間にわたり診療行為を行うことが認められています。ただし、日本の医師免許等を持たないため、すべての医療行為が許可されているわけではなく、特に薬剤の処方箋を発行することは認められていません。

臨床修練の許可は、特定の専門分野における高度な知識や技術（例として、消化管内視鏡を用いた診断や治療に関する専門知識・技術など）を習得することを具体的な目的とし、かつ日本において適正な方法で研究や研修を行うことが保証されている外国籍の医師・歯科医師に対してのみ与えられます。これは、臨床修練が単なる労働ではなく、あくまで研修・修練であることを明確にするためです。

また、臨床修練中に実施する診療行為に対して、報酬を得ることは一切認められていません。これは、この制度があくまで教育・研修を目的としたものであり、労働力として利用されることを防ぐための措置です。臨床修練の期間が修了し、指定された病院長や厚生労働大臣によってその成果が十分であると認められた外国人医師等には、臨床修練証明書が発行されます。

重要な点として、この臨床修練制度は、日本国内で永続的に診療を行うための日本の医師免許や歯科医師免許を付与するものではありません。あくまで限られた期間と範囲内での研修を目的とした特例措置です。

臨床修練指定病院の指定基準

臨床修練指定病院として指定されるためには、厚生労働大臣が定める特定の基準を満たす必要があります。主な指定基準は以下のいずれかに該当することです。

1. 大学附属病院：大学に附属する病院であること。
2. 臨床研修指定病院：医師法第16条の2第1項に基づいて臨床研修病院として指定されている病院であること。ただし、この基準に該当する場合は、過去に外国人医師等の研修を受け入れた実績があるか、具体的な受け入れ計画があるか、または受け入れ体制が確立していることのいずれかを満たす必要があります。
3. 国立高度専門医療研究センター等：「高度専門医療に関する研究等を行う独立行政法人に関する法律」第4条第1項に規定される国立高度専門医療研究センターであること。こちらも、上記2の臨床研修指定病院と同様に、外国人医師等の研修実績、具体的な受け入れ計画、または受け入れ体制のいずれかが必要です。
4. その他の病院：上記の1から3に該当しない病院でも指定される可能性があります。ただし、この場合は受け入れる専門分野を特定し、その分野が以下の条件をすべて満たす必要があります。
上記の1から3の病院と同等の医療機能を有しているか、または臨床修練病院等として指定されている1から3の病院と、外国人医師等の指導監督や臨床修練の場面において緊密な連携を確保することについて、当該病院の同意を得ていること。
外国人医師等を受け入れ、適切に指導・管理できる体制が整っていること。
* 外国人医師等の研修や国際的な医療交流に関する実績があるか、または具体的な計画を有していること。
5. 診療所：病院だけでなく、診療所でも指定される可能性があります。この場合も、受け入れる専門分野を特定し、その分野が以下の条件をすべて満たす必要があります。条件は、上記4の「その他の病院」と同様で、臨床修練病院等として指定されている1から3の病院との緊密な連携、受け入れ体制の確立、そして外国人医師等の研修や国際交流に関する実績または具体的な計画が求められます。

これらの厳しい基準を満たした医療機関のみが臨床修練指定病院として認められ、外国人医師等が日本の医療技術を学ぶための環境を提供しています。臨床修練指定病院は、日本の医療の国際貢献や外国人医師等の育成において、極めて重要な役割を担っています。

もう一度検索