臨床宗教師

臨床宗教師とは、被災地、医療機関、福祉施設などの公共空間において、人々の心のケアを専門的に行う宗教者のことです。この言葉は、欧米におけるチャプレンという職務に対応する日本語として考案されました。

臨床宗教師の活動は、特定の宗教の布教や伝道が目的ではありません。高度な倫理観に基づき、相談者の価値観を尊重しながら、宗教者としての豊富な経験を活かし、苦悩や悲嘆を抱える人々に寄り添うことを重視します。仏教、キリスト教、神道など、様々な信仰を持つ宗教者が協力し、人々の心のケアに貢献しています。

臨床宗教師の誕生

臨床宗教師の活動が注目されるようになった背景には、2011年3月に発生した東日本大震災があります。震災直後の同年5月、宮城県宗教法人連絡協議会が「心の相談室」を開設し、被災者の心のケアを開始しました。この活動を契機に、東北大学が臨床宗教師の養成を始めました。その後、龍谷大学、鶴見大学、高野山大学、武蔵野大学、種智院大学、上智大学など、多くの大学機関が臨床宗教師の養成に取り組んでいます。

緩和ケアに携わっていた医師の岡部健は、日本においても、寺院以外の場所で終末期の患者に寄り添う宗教者の必要性を提唱しました。この考えに共鳴した鈴木岩弓が、2012年に東北大学で養成講座を創設しました。この講座は、特定の宗教に限定せず、僧侶、牧師、新宗教の教師など、多様な宗教者を対象としています。

臨床宗教師の養成

臨床宗教師の養成講座は、東北大学だけでなく、龍谷大学実践真宗学研究科、種智院大学臨床密教センター、鶴見大学（及び總持寺）などでも実施されています。これらの講座は、臨床宗教師の専門性を高めるために重要な役割を担っています。

2016年2月には、これらの養成講座を実施する機関が協力し、「日本臨床宗教師会」が設立されました。これにより、臨床宗教師の活動が組織的にサポートされるようになり、社会的な認知度も高まりました。

講座内容と資格

臨床宗教師の養成講座は、通常2年間かけて行われます。講座の内容は、座学、ワークショップ、学外での実習、他宗教や病院・老健施設などでの実習など、多岐にわたります。これらの学びを通して、臨床宗教師は、多様な状況に対応できる能力を身につけます。

日本臨床宗教師会は、2018年3月から資格認定制度を開始しました。この制度は、臨床宗教師が医師や看護師などの他の専門職と協力しやすくするために設けられました。資格認定によって、臨床宗教師は、より専門的な知識と技能を持つことが保証され、信頼性が高まります。

関連情報

臨床宗教師の活動は、NHK教育のドキュメンタリー番組「臨床宗教師 - 限られた命とともに」で紹介されました。また、藤山みどりによる研究レポート「「臨床宗教師」資格制度の可能性を探る - 「臨床宗教師」をめぐる考察」は、臨床宗教師に関する重要な考察を提供しています。

関連用語

臨床宗教師に関連する用語として、臨床僧、臨床仏教師、ビハーラ僧、臨床パストラル・カウンセラー、心の相談員、スピリチュアルケアワーカー、清浄華院認定心理カウンセラー、信州・支え合いひろばなどがあります。これらの用語は、臨床宗教師の活動を理解する上で役立ちます。

外部リンク

• - 東北大学大学院文学研究科実践宗教学寄附講座: 臨床宗教師関連の情報が掲載されています。
• - 龍谷大学大学院実践真宗学研究科: 臨床宗教師研修に関する情報を提供しています。
• - 種智院大学臨床密教センター: 臨床密教と関連する情報を確認できます。

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