自家不和合性

自家不和合性（Heterothallism）について

自家不和合性とは、菌類が特定の他の個体や系統と交配しなければ有性生殖が行えない性質を指します。この現象は、単一の株の中で有性生殖が可能な菌と、他の株との組み合わせでのみ有性生殖を行う菌に分かれます。自己交配ができるものは「自家和合性（Homothallic）」と呼ばれるのに対し、自己交配ができないものは「自家不和合性（Heterothallic）」とされます。この言葉は、1904年に菌類学者ブラケスレーによって初めて提唱されました。自家不和合性は主にケカビ目などの菌類において観察されますが、その概念は他の有性生殖を行う生物にも適用される場合があります。

ケカビ類における自家不和合性

ケカビ類は配偶子のう接合を通じて接合胞子のうを形成することで有性生殖を行います。一部の種では、単一株でも接合胞子のうを形成しますが、多くは適切な他の株が必要です。接触した点で菌糸が交わることにより、接合胞子のうが形成されます。この場合、交配可能な株は二つのグループに分類され、一つのグループ内では交配ができず、異なるグループ同士でのみ交配が可能です。このため、株は性別が異なるかのように見えますが、実際には性別とは異なる概念です。

ケカビの配偶子のうには形やサイズの違いがないため、数種類の型で表現されます。たとえば、プラス型（+）とマイナス型（-）があり、この違いは対立遺伝子により制御されていることが分かっています。自家不和合性であっても、単一株が異なる系統の核を持つ異核共存体を形成するような場合も観察されます。

卵菌類における自家不和合性

卵菌類のミズカビ類においても、自家不和合性が見られます。ミズカビ類では自家和合性が一般的ですが、一部の種においては自家不和合性が確認されています。この類の有性生殖も配偶子のう接合によって行われ、ここでは雄株と雌株が明確に区別されます。

ワタカビのような種では、雄性配偶子のうが形成される株と雌性配偶子のうが形成される株が互いに近接することで交配が行われます。この際、株からは複数のホルモンが分泌され、構造の形成に寄与しています。しかし、互いに異なる株が存在するわけではなく、様々な条件によって雄性または雌性に振る舞う株も確認されています。このため、菌類の間での性差についての理解は深まっていますが、今後の研究によってさらに明確にされることが期待されます。

結論

自家不和合性は菌類に特有の興味深い現象であり、配偶子の型や生殖様式の多様性を理解する手助けとなります。これにより、菌類の生態や進化に関する知見が深まり、生物多様性の理解へとつながることでしょう。

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