自己効力感

自己効力感について

自己効力感（じここうりょくかん）またはセルフ・エフィカシー（self-efficacy）とは、自分が特定の状況において求められる行動を成功裏に遂行できるという信念を指します。この概念は、カナダの心理学者アルバート・バンデューラによって提唱され、彼の社会的認知理論の中心的な役割を果たしています。自己効力感が高いほど、実際に行動を実施できる確率が高まるという研究結果もあります。

自己効力感は、人が自身の思考や感情、行動をどのようにコントロールするかに深く関わっています。似た概念として自尊感情（self-esteem）がありますが、自己効力感は主に目標達成のための能力に焦点を当てています。一方で自尊感情は自分そのものを信じる感情であり、両者は異なる視点から自己評価に影響します。

定義

バンデューラは、行動実現の前提要因を「結果予期」と「効力予期」と定義しました。結果予期は「ある行動が特定の結果をもたらす」との予測であり、効力予期は「その結果を生み出す行動を自分が行える」との自信です。自己効力感は、自分が効力予期をどれだけ持っているか、つまりアクションを通じて望む結果を得る能力についての信念とも言えます。

自己効力感を生む要因

自己効力感を高める要因として、次のようなものがあります：

• - 達成経験：自分で成功を掴んだ経験が最も重要です。
• - 代理経験：他者の成功を観察すること。
• - 言語的説得：他人からの励ましの言葉。
• - 生理的情緒的高揚：ポジティブな気分や高揚感。
• - 想像的体験：自身や他者の成功を想像すること。
• - 承認：他者からの認識や評価。

これらの要素は、自己効力感を育む大きな要因とされています。

自己効力感のタイプ

自己効力感にはいくつかの側面があり、その代表的なものは以下の通りです：

• - 自己統制的自己効力感：個人の行動を管理する能力。
• - 社会的自己効力感：対人関係における影響力。
• - 学業的自己効力感：学習や教育に関する自己効力感。

自己効力感が与える影響

自己効力感が増すと、次のような効果が見られるとされています。

• - 行動目標の達成率が向上。
• - 取り組む姿勢や努力が強化される。
• - 過去の成功体験から、次の行動への自信が生まれる。
• - 心理的・生理的反応が安定し、不安感や恐怖が減少。

特に、健康行動に関する選択においても自己効力感が重要です。禁煙やフィットネス、栄養管理など、健康を維持するための選択肢は自己効力感に大きく依存しています。自己効力感の高まりは、より健康的な行動を促進し、結果として生活の質や健康状態を改善することにつながります。

医療における適用

最近の医療においては、病院中心の考えから健康増進や予防医療にシフトしています。このような流れの中、自己効力感は市民の健康行動を促す大きな要素と考えられています。研究によると、自己効力感は健康的な行動を促進し、不健康な習慣を抑制する上でも効果的です。例えば、医療現場では患者に対して自己効力感を基盤とした教育を行い、健康を維持するための行動を促す取り組みが進められています。

このように、自己効力感は個人の行動や意欲に大きな影響を与え、心理的・身体的な健康を向上させるための重要な理解を提供します。

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