自己実現

自己実現（じこじつげん）

自己実現は、人間が持つ潜在能力を最大限に開花させ、自己の目標を追求する過程を指す心理学の用語です。この概念は、ユダヤ系のゲシュタルト心理学者であり脳病理学者でもあるクルト・ゴルトシュタインによって初めて使われました。

ゴルトシュタインとロジャーズによる概念化

ゴルトシュタインは、心理学だけでなく、教育や医療にも多大な影響を与えました。彼はベルリン大学の教授として活動していましたが、ナチスの影響により1935年にオランダへ逃れ、翌年にはアメリカへ移住しました。彼の教え子であるカール・ロジャーズは、自己実現の概念をさらに発展させました。ロジャーズは、健全な人が自分の可能性を開発し、人生における究極の目標を定めることが重要であると述べました。この思想により、自己実現は人間の成長や努力の象徴として認識されるようになりました。

マズローの欲求段階説における位置づけ

アメリカの心理学者アブラハム・マズローは、自己実現を「欲求段階説」の最上位に位置づけました。この理論では、人間の欲求が階層的に構造化されており、自己実現はその頂点にあります。仮に他の欲求、例えば生理的欲求や安全欲求が満たされた際に、人間は初めてこの自己実現に向けて動くとされています。マズローの理論は、教育や経営など様々な分野に広がり、多くの人々に影響を与えました。

経営学への応用

マズローの自己実現の概念は、経営学にも応用されました。特に、ダグラス・マグレガー、クリス・アージリス、フレデリック・ハーズバーグといった著名な学者たちは、自らの理論において自己実現を重要な要素として取り入れました。経営学の分野では、モチベーション論やリーダーシップ論、マーケティング論など、自己実現に基づいた多様な研究が展開されています。

自己実現は人間の成長過程を探求するための重要な視点を提供します。個人が自らの能力を引き出し、人生の目的を果たすために努力することは、心理学的に見ても社会的に見ても極めて重要なテーマです。この概念が教育や経営の現場でどのように応用され、活かされるかは、さらなる研究や実践を通じて検討され続けています。

もう一度検索