自彊術

自彊術（じきょうじゅつ）とは

自彊術は、大正5年（1916年）に手技療法士の中井房五郎によって創設された健康体操です。この体操は、個々が自身の健康を促進することを目的とし、多くの人々に受け入れられてきました。

背景

中井房五郎は、実業家の十文字大元の難病を治療する際、その施術の過程を体操として体系化しました。十文字大元はこの体操に「自彊術」という名前を付け、自身の家族や周囲の人々に広めました。さらには、自身が経営する金門商会の寄宿舎生にも指導を行い、体操を日常に取り入れました。この体操の効果が確認される中、大正7年には道場を設立し、当時の従業員400人余りが参加した記録が残っています。

自彊術の普及と発展

十文字大元は、自彊術の普及を目指し、後藤新平伯爵の助力を得て、拓殖大学内に自彊術会を設立しました。その後、東京帝国大学や早稲田大学などと連携し、全国にその名を広めていきます。大正6年には文部次官の設営で発表会が開催され、政府関係者や軍関係者から高い評価を受けました。当時、日本の人口が約6000万人であったことから、300万人以上が自彊術同人会に参加するという盛況ぶりを見せました。十文字大元はこの活動のために、自己の私財を投じ、その成長を助けたとされています。

自彊術の精神

十文字大元が自彊術を普及した根本精神は、「国民そして世界の人々が健康になるために自彊術を活用してほしい」というもので、商業主義からの独立を強く願っていました。彼は生涯を通して、自彊術の普及に努め、その意義を多くの人に広めました。

歴史的記録

1940年には、「自彊術の神髄」が出版され、当時の自彊術がどのように機能し、実践されていたかが詳細に記録されています。これは当時の最高裁判所である大審院によって監修され、今でもその意義は評価されています。

戦後の変遷

戦後の自彊術には新たな展開もありました。久家恒衛と近藤芳郎医学博士が連携し、健康と長寿をテーマにした会を発足し、大都市で盛況裡に行われました。しかし、この取り組みには抗争が伴い、特許問題や疑惑が生じる場面もありました。特に平成9年には自彊術の指導権を独占するような行為があり、これが訴訟騒ぎに発展しました。多くの団体が連携してこの行為に立ち向かい、最終的には却下されました。これは自彊術の創始者である十文字大元の精神を軽視するものとされ、様々な評価を受けました。

実践団体と教育

自彊術は現在も多くの団体によって引き継がれています。学校法人十文字学園や近畿自彊術友の会、他にも多くの団体が実践し続けています。また、中井房五郎の著書も多くの人に支持されており、実践者によってその教えが継承されています。

参考資料

中井房五郎は大正5年に自身の著作『自彊術』を出版しており、31の動作が詳細に解説されています。この書籍は国立国会図書館の近代デジタルライブラリーで今でも閲覧可能であり、その内容は現代にも通用するものであると評価されています。著名な政治家らも序文を寄せており、当時の自彊術が社会的にどれほど受け入れられていたのかを物語っています。

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