自殺幇助

世界の自殺幇助：現状と課題

自殺幇助とは、他者が自殺行為を助ける行為を指します。特に医師による自殺幇助は、医師が致死量の薬物処方など、自殺に必要な知識・手段を提供する行為を指し、積極的安楽死とは区別されます。積極的安楽死では医師が直接薬物を投与しますが、自殺幇助では患者自身が行います。

合法化の現状

スイス、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、カナダ、オーストラリア（ノーザンテリトリーを除く）、スペイン、ニュージーランド、オーストリア、ポルトガル、アメリカ合衆国の一部州では、医師による自殺幇助が合法化されています。ドイツ、イタリア、コロンビアでは憲法裁判所が合法性を認める判決を出していますが、法制化には至っていません。その他多くの国では、自殺幇助は犯罪です。興味深い点として、スイス、アメリカ、オーストリア、イタリア、ドイツでは自殺幇助は合法である一方、積極的安楽死は違法です。日本では安楽死と自殺幇助の区別があいまいです。

各国の状況

ヨーロッパ

オランダ、ベルギー、ルクセンブルクでは2000年代に、カナダ、オーストラリアでは2010年代に、スペイン、ニュージーランド、オーストリア、ポルトガルでは2020年代に、それぞれ医師による自殺幇助が合法化されました。

スイス

スイスでは1942年から自殺幇助が認められています。裁判所の許可の下、「判断能力があり利己的な動機を持たない」場合、医師が処方した薬物による安楽死が可能です。スイスは外国人にも自殺幇助を提供する唯一の国です。著名な映画監督、ジャン＝リュック・ゴダールもスイスで安楽死を選択しました。

オランダ

オランダでは、国民は生まれたときから担当医が決まっており、回復の見込みがなく、苦痛のみが残る場合、致死量の薬物の使用が認められる場合があります。

ドイツ

ナチス政権の反省から、安楽死に対して慎重な姿勢を取ってきましたが、2004年の世論調査では積極的安楽死への賛成が70％に達しました。「自殺ツーリズム」も盛んで、スイスの団体「ディグニタス」では1998年から2016年の間に2328人が自殺幇助を受け、そのうち46％がドイツ人でした。2015年には自殺幇助の商業化を禁止する法律が制定されましたが、2020年に憲法裁判所がこれを違憲と判断し、自己決定権を認めました。これを受け、2021年には350人が自殺幇助で亡くなったと報道されています。同年、ドイツ医師会は職業規範から自殺幇助の禁止を削除しました。現在、議会で自殺幇助に関する立法が進められています。なお、ドイツでは積極的安楽死は依然として違法です。

アメリカ合衆国

州によって法律が異なります。1994年にオレゴン州で合法化されて以降、多くの州で合法化が進みました。アメリカでは自殺幇助は認められていますが、積極的安楽死はいずれの州でも違法です。ジャック・ケボキアンは、合法化前に自殺幇助を行い「死の医師」と呼ばれました。

日本

日本では、自殺幇助は刑法第202条（自殺関与及び同意殺人）で禁じられています。歴史的には、切腹における介錯も自殺幇助の一例と言えるでしょう。

結論

自殺幇助をめぐる議論は、生命の尊厳、自己決定権、医療倫理など、複雑な問題を含んでいます。各国で異なる法的枠組みが存在し、その背景には歴史的、文化的、宗教的な要因が複雑に絡み合っています。今後も、倫理的、法的議論は継続していくと考えられます。

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