興梠一郎

興梠 一郎：現代中国研究の第一人者

日本の現代中国研究を牽引する専門家の一人、興梠 一郎氏（1959年生まれ）は、現在、神田外語大学外国語学部アジア言語学科において、中国語専攻長および教授を務めています。その研究の中心は現代中国論に置かれ、政治、経済、社会など、多様な側面から中国の現在を深く分析しています。

大分県に生まれた興梠氏は、九州大学経済学部を卒業後、大手商社である三菱商事の中国チームで実務経験を積みました。その後、学術の世界に進み、カリフォルニア大学バークレー校および東京外国語大学の大学院で修士課程を修了しています。この間の商社での経験とアカデミックな学びが、その後の多角的な視点に基づいた研究活動の礎となっています。

研究者としてのキャリアを本格化させてからは、政府機関での重要な役職を歴任しました。具体的には、香港総領事館に勤務する外務省専門調査員、外務省国際情報局分析第二課の専門分析員として、中国に関する情報分析に携わりました。また、参議院第一特別調査室の客員調査員としても活動しています。これらの経験は、理論だけでなく、現実の国際情勢や政策立案に関する深い洞察力を養う上で非常に貴重なものでした。これらの豊富な経験を経て、現職である神田外語大学教授に至ります。

興梠氏は、その専門知識を広く社会に発信する活動も積極的に行っています。テレビ番組への出演はその代表的な例です。NHKスペシャル『激流中国』では資料提供を行い、NHKBS『きょうの世界』にはゲストとして登場するなど、主要な報道番組で専門家として見解を述べてきました。また、『NHKクローズアップ現代』では、エイズ問題や「世界の工場」としての中国の変化といったテーマで出演し、BSフジ『プライムニュース』、BS-TBS『報道1930』、BS日テレ『深層NEWS』など、様々なBS局の番組でも北朝鮮や中国関連の解説を不定期で行っています。

著作活動も精力的に行っており、現代中国に関する多くの書籍を世に送り出しています。単著としては、『「一国二制度」下の香港』（論創社、2000年）、『現代中国 グローバル化のなかで』（岩波新書、2002年）、『中国激流 13億のゆくえ』（岩波新書、2005年）、『中国 巨大国家の底流』（文藝春秋、2009年）、『中国巨大国家の深層』（公共政策調査会、2012年）、『中国目覚めた民衆 習近平体制と日中関係のゆくえ』（NHK出版新書、2013年）、そして近年の大著である『毛沢東 革命と独裁の原点』（中央公論新社、2023年）などがあります。これらの著作は、香港問題から現代中国の社会変動、日中関係、さらには建国の父である毛沢東の再評価まで、幅広いテーマを扱っており、多くの読者に現代中国理解の指針を与えています。

共編著や訳書も多数手掛けており、他の研究者との共同研究の成果や、海外の重要な研究文献の紹介にも貢献しています。主な共編著には、『東アジア諸地域の社会変動に関する日仏共同研究』への寄稿（2000年）、長谷川雄一編『日本外交のアイデンティティ』所収の「戦後日中関係」（南窓社、2004年）、神保哲生らとの共著『中国 隣りの大国とのつきあいかた』（春秋社、2007年）、神田外語大学国際社会研究所編『グローカリゼーション 国際社会の新潮流』所収の「現代中国を読む」（神田外語大学出版局、2009年）などがあります。訳書としては、R・ランドル・エドワーズらの『中国の人権』（有信堂高文社、1990年）、入江昭の『日中関係この百年』（岩波書店、1995年）、ピーター・ブース・ワイリーの『黒船が見た幕末日本』（TBSブリタニカ、1998年）などがあり、海外の研究動向を日本に紹介する役割も担っています。

学術論文も多数発表しており、国立情報学研究所のCiNiiでその研究成果を確認することができます。さらに、神田外語大学の教員実績ページや、YouTubeチャンネル「興梠一郎 / Korogi Ichiro【Official】」を通じて、その活動や考え方に触れることが可能です。

このように、興梠一郎氏は、現代中国研究の第一線で活躍する専門家として、研究、教育、著作、メディア出演など、多岐にわたる活動を通じて、日本社会における現代中国への理解促進に大きく貢献しています。

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