興武

興武（こうぶ）は、明朝末期に反乱指導者として知られる高迎祥（こうげいしょう）が、自らを「闖天王（そうてんおう）」と称した際に使用したとされる私年号です。この年号が用いられたのは1635年（明の崇禎8年）に限られており、短期間のみ使用されたと考えられます。

この年号についての研究は、中国の歴史学者である李崇智（りすうち）によって詳細に行われています。李崇智は、小説家・姚雪垠（ようせいいん）の歴史小説『李自成』をはじめとする様々な稗史（はいし：正史ではない歴史を記した書物）を綿密に考証し、その結果を『中國歷代年號考　修訂本』にまとめています。この研究によって、興武という年号の存在が明らかになったと言えるでしょう。

注目すべき点として、興武という年号に言及している史料は決して多くはありません。しかし、数少ないながらも言及している史料を精査すると、いずれも1635年（崇禎8年）を興武元年としていることが判明しています。これは、興武が1635年に限定された年号であることを強く示唆しています。

年号の対照表は、以下のようになります。


この年号の情報源としては、呉世済（ごせいさい）が著した『太和県禦寇始末（たいわけんぎょこうしまつ）』という史料が挙げられます。この史料は、当時の反乱の状況を記録したもので、興武という年号が実際に使われていたことを示す貴重な資料です。

このように、興武という年号は、高迎祥の短い反乱の期間中にのみ使用された、歴史の片隅に埋もれがちな私年号です。しかし、李崇智の研究や、一部の史料によって、その存在が現代に伝えられています。

参考文献

李崇智《中國歷代年號考　修訂本》（北京：中華書局，2001年1月） ISBN 7101025129
呉世済『太和県禦寇始末』

これらの文献を参考にすることで、興武という年号についての理解を深めることができるでしょう。

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