航海条例

航海条例の概要とその影響

航海条例（こうかいじょうれい、英: Navigation Acts）は、1651年にイングランド共和国により制定された法律で、国の貿易をイングランド船でのみ行うことを規定した。重商主義の一環であり、保護貿易主義の形成を目指したこの条例は、戦時中でも安定した船の供給を確保する狙いもあった。特に1651年の条例は、オランダ商人による中継貿易を排除するために策定され、英蘭戦争の引き金ともなった。

取り巻く歴史的背景

この航海条例は、1381年から1696年の間に複数回改訂され、特に1651年のものは重要な位置を占める。その背後には、イングランドの貿易の低迷やオランダの台頭が大きく関わっている。八十年戦争によるイングランドの貿易の落ち込みや、オランダ共和国との通商停止の解除が影響し、イングランド商人はオランダに圧倒されていた。

1647年には、オランダとの通商停止が解除され、イングランド商人はアイルランドや地中海、レバント地域との貿易で困難な状況に直面していた。この背景で、イングランドの議会は、輸入品の管理や自国の商業を保護する必要性を感じ、航海条例の制定へと進んだのだ。

条例の主な内容

1651年の航海条例の核心は、貿易をイングランド及び植民地の船に限定し、外国船の利用を禁止するものであった。具体的には以下のような条項が定められた。
1. イングランド及びその植民地に外国船の入港を禁止。
2. 船の乗組員はイングランド人（植民地住民を含む）で構成される必要がある。
3. 貨物はイングランドの船でなければならない。

特に、イングランドの外国との貿易においては、居住地ではなく国籍を重視したため、植民地住民は他の植民地との貿易が可能だったが、オランダ船を経由することはできなかった。このようにして、条例は特にオランダに焦点を当てすべく策定された。

英蘭戦争の勃発

条例が施行されると、イングランドとオランダの関係が一層緊張し、1652年には両国が交戦状態に突入する。実際に、オランダ船への攻撃が発端となり、イングランド海軍が圧倒的な強さを示し、いくつかの海戦で勝利を収めた。

この戦争は、航海条例の影響を強く受けた外交政策の一環であり、その後のイングランドとオランダの商業関係に深い影響を与えることとなった。オランダは、イングランドとの貿易から締め出されたことで、その経済は大きな打撃を受けることとなり、特に中継貿易の依存が強かったため、商業活動の大部分が阻害された。

航海条例の後の展開

1651年の航海条例は、その後も改正を重ね、1660年に制定された新たな規定で植民地の主要産物の輸出について厳しい条件を設けた。1673年には密貿易に対する取り締まりを強化し、1696年には商務植民地庁を設置して貿易の監視を強化した。このように、条例は時代とともにより厳格なものへと成長していった。

しかし、これに対する反発の声もあった。特に、植民地の自主性を損なう形での課税措置や産業への影響は、大きな抗議を招いた。密輸は一般的になり、18世紀には特に盛んになっていった。アメリカ植民地においては、これらの措置が愛国者の蜂起を促し、アメリカ独立戦争の要因にもなった。

まとめ

航海条例は、イングランド国内の貿易を保護し、オランダとの商業競争を制限するために制定された重要な法律であり、その影響は広範囲にわたった。条例の制定とその後の改正は、イングランド及び植民地の経済に対して積極的な影響をもたらしつつも、同時に反発や抵抗を生む原因ともなり、特にアメリカ独立戦争への道を開くこととなった。最終的には、航海条例は時代とともにその意義を変え、1849年、1854年にはその撤廃に至った。

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