航空交通管制部

航空交通管制部とは

航空交通管制部（Area Control Center, ACC）は、国土交通省の地方支分部局であり、航空管制官が航空路管制業務を行う重要な機関です。日本国内の空域は福岡飛行情報区（FIR）で覆われており、その中で3つの航空交通管制部がそれぞれ管轄空域を担当しています。

航空交通管制部の役割

各航空交通管制部は、管轄空域をさらに細分化したセクターごとに業務を行い、航空機の安全かつ円滑な運航を支えています。各管制部にはICAO空港コードが割り当てられており、東京ACCはRJTG、福岡ACCはRJDG、神戸ACCはRJBGとなっています。

現在の航空交通管制部

以下に、現在の3つの航空交通管制部とその業務内容について詳しく解説します。

東京航空交通管制部 (東京ACC)

• - 所在地：埼玉県所沢市
• - セクター数：17
• - 担当空域：北海道から愛知県および紀伊半島までの低高度陸上空域（一部高高度陸上および洋上も担当）
• - 特徴：所沢航空記念公園内に位置し、所沢[[航空発祥記念館]]が隣接しています。

福岡航空交通管制部 (福岡ACC)

• - 所在地：福岡県福岡市東区
• - セクター数：19
• - 担当空域：東京ACCの一部セクターを除く高高度陸上空域と、東京ACCを除く洋上部の航空路管制
• - 特徴：ICAO空港コード「RJDG」の「DG」は、かつて管制部の所在地にあった雁ノ巣飛行場（ブレディ飛行場）の航空無線標識局のコールサインに由来します。

神戸航空交通管制部 (神戸ACC)

• - 所在地：兵庫県神戸市西区
• - セクター数：11
• - 担当空域：北陸・上高地より西（紀伊半島除く）、沖縄本島の中央部より北の低高度陸上空域
• - 特徴：旧神戸航空衛星センターに、旧那覇ACCを移転する形で設置されました。また、沖縄県那覇市には神戸航空交通管制部那覇分室が設置されています。

過去に存在した航空交通管制部

かつては、以下の航空交通管制部も存在しました。

那覇航空交通管制部 (那覇ACC)：沖縄県那覇市に位置し、ICAO空港コードはRORGでした。
札幌航空交通管制部 (札幌ACC)：北海道札幌市東区に位置し、ICAO空港コードはRJCGでした。現在は新千歳空港事務所札幌分室として転用されています。
航空交通管理センター (ATMC)：福岡県福岡市東区に位置し、福岡FIR内の情報提供や交通流制御を行っていました。洋上管制業務は福岡ACCに移管されましたが、ATMCによる交通流制御は継続されています。

航空交通管制部の業務内容

航空交通管制部では、航空管制官が24時間体制で航空路管制業務を行っています。管制官は、航空路管制処理システム (TEPS) を用いて、レーダー画面上の航空機と無線で交信し、安全な運航をサポートします。各セクターには、パイロットと交信する「レーダー対空席」と、他の機関と調整を行う「調整席」の2名がペアで配置され、30分ごとに交代して業務を行います。

日本における管制区管制所の再編

近年、航空交通量の増加に伴い、管制能力の限界が近づいています。国土交通省は、航空交通管制の効率化と安全性の向上を目指し、管制空域の再編を進めています。

再編の概要

再編計画では、現在の札幌・東京・福岡・那覇の航空交通管制部とATMCを、東京・神戸・福岡の3箇所に集約します。これにより、低高度の管制は東京と神戸が担当し、高高度と洋上の管制は福岡が担当することになります。

再編によって、管制官は離陸後や着陸態勢に入った航空機に集中して対応できるようになり、より効率的な管制が可能になります。また、日本上空を通過するだけの航空機は福岡が一括して担当するため、交信回数が減少し、管制官一人当たりの処理能力が向上すると見込まれています。

再編のスケジュール

再編は段階的に進められており、以下のようなスケジュールで実施されています。

2018年10月：那覇ACCの人員が神戸ACCに移転。
2020年11月：福岡ACCを高度で上下分離。
2021年1月・2月：福岡ACC低高度を神戸ACCに移管。
2021年12月：神戸ACCを高度で上下分離。
2022年2月：神戸ACCの高高度を福岡ACCに移管。
2023年6月：東京ACCの一部空域を高度で上下分離、高高度を福岡ACCに移管。
2024年2月：東京ACCの移管予定空域を神戸ACCに移管。
2024年3月：札幌ACCの空域を高度で上下分離、高高度と洋上を福岡ACCに移管。
2024年4月：札幌ACCの広域セクターをターミナル空域管制に転換。
2024年6月：東京ACCの一部を高度で上下分離、ATMCの洋上管理セクターを福岡ACCに移管。
2024年10月：札幌ACCの低高度を東京ACCに移管、札幌ACCを廃止。
2025年4月：東京ACCの高高度を福岡ACCに移管、再編完了予定。

まとめ

航空交通管制部は、航空機の安全運航を支える重要な役割を担っています。管制区の再編により、今後さらに効率的で安全な航空管制が実現されることが期待されます。

関連項目

航空路管制
航空交通管制
航空交通管理センター (ATMC)
飛行情報区 (FIR)
航空管制官

外部リンク

* 航空交通管制部 - 国土交通省

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