船舶料理士

船舶料理士（せんぱくりょうりし）

船舶料理士は、船内で船員に食事を提供する専門家であり、その能力を国が認めた国家資格「船舶料理士国家試験」の合格者に与えられる称号です。英語では "Ship dish person" と称されます。

役割と業務内容

この資格を持つ専門家は、航海中の船舶において、乗組員の食料の準備から調理、提供までの一切の業務を担います。単に食事を作るだけでなく、栄養バランスや衛生管理に配慮し、過酷な海上での生活を支える重要な役割を果たします。

特に、一定規模以上の船舶では、船舶料理士の配置が法律で義務付けられています。具体的には、近海区域や遠洋区域を航行する総トン数1000トンを超える大型船舶、あるいは第三種船員に関する従業制限が適用される総トン数1000トン以上の漁船において、船内での調理業務は船舶料理士が行うことと定められています。これは、長期間にわたる航海において、船員の健康維持や士気向上にとって、質の高い食事が不可欠であるためです。

資格取得への道筋

船舶料理士の資格を取得するには、国家試験に合格する方法が一般的ですが、一定の条件を満たせば認定によって取得することも可能です。

受験資格

船舶料理士国家試験を受験するためには、原則として18歳以上であることに加え、乗船経験と調理業務の経験が求められます。具体的な乗船経験としては、1年以上の乗船経験、または司厨部員以外の職務での3ヶ月以上の乗船経験があることが条件とされます。これに加えて、船内または陸上での調理業務に従事した経験が必要です。

認定による取得

特定の教育機関を修了し、十分な乗船経験を持つ者や、すでに他の関連資格を持つ者は、試験を経ずに資格が認定される場合があります。例えば、海員学校の司厨・事務科を卒業し、2年以上の乗船歴がある者、あるいは国土交通大臣の指定する船舶調理士養成施設（調理師養成施設を含む）の学科を修了し、同様に2年以上の乗船歴を持つ者は、認定の対象となり得ます。また、調理師や栄養士といった陸上での調理・栄養に関する国家資格の有資格者も、認定による取得の道が開かれています。

なお、過去には特例措置も存在しました。平成18年（2006年）2月2日までの期間においては、船員手帳の職名が司厨部員以外であっても、3年以上の調理に関する業務経験があれば、受験が認められていました。

試験について

船舶料理士国家試験は、例年10月中旬から下旬にかけて、東京都内で実施されます。試験は、幅広い知識を問う筆記試験と、実際の調理技能を評価する実技試験の二部構成で行われます。

筆記試験科目

筆記試験では、船内での調理業務に不可欠な専門知識が問われます。主な科目は以下の通りです。

衛生法規
栄養学
食品学
食品衛生学
公衆衛生学
調理理論
食文化概論

実技試験科目

実技試験では、与えられた課題に基づき、実際に2人前の料理を調理し、盛り付けまでを行います。実技試験で評価される料理の分野は、日本の船員にとって馴染み深いものが中心となります。

日本料理
西洋料理
中華料理

関連情報

船舶料理士の資格や試験に関する詳細は、海技振興センター（旧日本技海技協会）などの関連機関から提供されています。また、船舶における食料の支給や調理業務に関する法的な規定は、船員法（特に第八十条第四項）や船内における食料の支給を行う者に関する省令に定められています。

これらの情報源は、資格取得を目指す者や船舶料理士の業務内容に関心を持つ者にとって、重要な手がかりとなります。

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