色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

村上春樹の13作目となる長編小説『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』は、2013年4月12日に文藝春秋から出版されました。この物語は、主人公・多崎つくるの過去と向き合う旅を描いており、友情、孤独、自己探求のテーマを深く掘り下げています。

この作品は、表紙にモーリス・ルイスの「Pillar of Fire」を使用し、装丁は大久保明子が手掛けています。出版の告知はナガリンに向けて行われ、発売前の予約では注目が集まり、初版は30万部とされるほどの期待を得ました。

出版の経緯

『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』は、2013年2月に文藝春秋が新作の発表を行い、その後、タイトルや発売日が明らかになりました。予約は早々に開始され、Amazonでは初日から1万部を売り上げるなどの話題を呼びました。発売時には4刷に達し、総計で100万部を超えるベストセラーとなっています。

物語のあらすじ

多崎つくるは、名古屋の公立高校で4人の友人たちと過ごしていました。その友人たちの名前には「色」が含まれているのに対し、彼だけが「色」の漢字がないことで、疎外感を抱きます。大学進学を経て彼は一時、友人グループから排除されてしまい、精神的に追い詰められる生活を送ります。

彼が人生の岐路に立たされるのは、36歳の時。新たに知り合った沙羅という女性との交流を通じて、彼は過去の友人たちに対する未練や無念を感じ、自らの心の傷と向き合う決意をします。彼は「巡礼の旅」と称し、友人たちを訪れることに決めます。旅を通じて、彼は友情の意味や、過去の出来事の真実を再び問い直すことになるのです。

登場人物とテーマ

物語には多崎を中心に彼の友人たちが登場し、それぞれが異なる人生を歩んでいます。赤松慶（アカ）はビジネスマン、青海悦夫（アオ）はスポーツマンとして成功を収めており、白根柚木（シロ）は音楽家として名を馳せます。これらのキャラクターは、多崎の心の成長や内面の変化を映し出す鏡のような役割を果たしています。

この作品では「巡礼の年」というフランツ・リストの音楽が重要なモチーフとして用いられ、無色の多崎が色と光を取り戻そうとする姿が印象的です。また、作品に登場する文化や音楽、会話の中から、村上春樹ならではの独特な風景が織り込まれています。

出版後の反響

発売後の快挙としては、英語版が2014年に登場し、海外でも反響を呼びました。特にニューヨークやロンドンでのサイン会では多くのファンが訪れ、村上作品のグローバルな人気を示しました。批評家からも高評価を得ており、特に音楽や文化への造詣が深い作品との評価がなされました。

村上春樹のこの小説は、自己発見の旅、失ったものの理解を深める過程を描き、読者に深い感慨を与えることでしょう。読む人の心に残る、温かくも切ないメッセージが込められています。多崎つくるの物語が、皆さんに新たな視点をもたらすことを期待しています。

もう一度検索