花園の悪魔

花園の悪魔

『花園の悪魔』は、著者横溝正史による短編推理小説で、金田一耕助シリーズの一作です。この作品は1953年に発生したバー・メッカ殺人事件を元にしたものとして知られています。初出は昭和29年2月の『オール讀物』で、その後1976年に角川文庫から短編集『花園の悪魔 : 他3篇』に収められました。さらにその改版においては『首』というタイトルに変更されています。

あらすじ

物語の舞台は、東京から短時間でアクセスできる温泉地の旅館が立ち並ぶ場面から始まります。花乃屋という旅館が経営する広大な花壇では、温泉の熱を利用した花作りが盛んな様子が描かれています。また、家族連れの客も多く、かつアベック向けの離れが庭に点在する独特の構造が特徴的です。

昭和2X年4月23日の朝、花乃屋のチューリップ畑で南条アケミの全裸死体が発見されます。アケミはヌードモデルとして活動しており、死体の発見されたポーズは彼女が数日前に撮影されていた状況と一致しています。彼女は絞殺されており、凶器のマフラーは髪の下に隠れた状態で発見されました。さらに、死後性交の痕跡も確認され、この事件は一層の謎に包まれます。

アケミは前日の午後、旅館の離れを電話で予約しており、彼女の同行者は別々に到着する予定でした。この計画から、彼女は自分が遅れても先に通してもらいたいという希望を持っていたようです。そして、事件当日の朝に現れた男がいることが確認されますが、その男の素性については従業員がほとんど見かけていないことから不明のままです。

捜査を進める中で、アケミが所属していた東亜美術倶楽部での聞き込みにより、遺留品となっていたマフラーがアケミの親友である山崎欣之助のものであることが判明します。警察は欣之助を指名手配しますが、彼の所在は掴めませんでした。

事故から45日後、ようやく事件の手がかりが見つかります。新宿駅の一時預け所で預けられていたトランクの中からは、アケミの衣服や、犯人が使用したと思われる服が見つかります。そして、興味深いことにその犯罪が示す女装という疑惑が浮上します。最終的に、金田一耕助が捜査に乗り出し、様々な手がかりをつなぎ合わせて事件の真相に迫ることになります。

主要登場人物

• - 金田一耕助：私立探偵。
• - 南条アケミ：東亜美術倶楽部所属のヌードモデル。
• - 山崎欣之助：アケミの関係者で、ダンサーやモデルとしても活動している青年。
• - 安川ナオミ：アケミと関わりのあるモデル。
• - 等々力大志：警視庁の警部。

まとめ

『花園の悪魔』は、推理小説の要素が濃厚な作品であり、金田一耕助が一連の謎を解明する過程が魅力的です。作中には数多くの登場人物が絡み合い、事件に隠された背景や人間ドラマが展開されます。エピソードが進むにつれ、読者は金田一の推理力や情景描写に引き込まれていくでしょう。

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