花脊の三本杉

花脊の三本杉

京都府京都市左京区に広がる大悲山国有林の深い緑の中に、威風堂々たる姿を見せる三本の巨大な杉があります。これらは総称して「花脊の三本杉」と呼ばれ、その名は大悲山や地名にちなんで「大悲山の三本杉」「花背の三本杉」とも称されることがあります。

特徴的な姿と歴史

この三本杉の最も際立つ特徴は、一本の巨大な根元から東、北西、西の三方向に分岐し、それぞれが独立した大木として天を目指すように真っすぐに伸びている点です。これらの主幹は、それぞれ「東幹」「北西幹」「西幹」と名付けられています。

三本杉は、近くに位置する古刹、峰定寺と深い結びつきがあり、古来より神聖な木として、地元の人々や参拝者からの篤い信仰を集めてきました。長い歴史の中で風雪に耐え、その樹齢はおよそ1200年を経ていると推定されています。根元付近の幹周は13メートル60センチメートルに達し、その永きにわたる生命力を物語っています。

樹高の新発見

長らく、花脊の三本杉の高さはおよそ35メートル程度と考えられていました。しかし、2017年の秋、林野庁京都大阪森林管理事務所がドローンを使用して簡易的な測定を行ったところ、実際の樹高が約60メートルに達する可能性が示唆されました。

この予備的な結果を受け、同年11月28日には専門機関によるより詳細な実測調査が実施されました。その結果、驚くべき事実が明らかになります。主幹である東幹の正確な樹高は62.3メートルを記録し、これは日本国内に現存する樹木としては当時確認されていた中で最も高い記録となりました。それまで国内最高峰とされてきた愛知県新城市に生育する傘杉の59.6メートルを上回ることが確定したのです。

さらに、北西幹も60.7メートルという驚異的な高さを計測し、これは国内第2位の記録に相当します。そして西幹も57.2メートルと、三本ともに日本の巨木としては類まれな高さを誇ることが判明しました。この詳細な調査によって、花脊の三本杉は日本の樹高ランキングを塗り替える存在として、改めてその価値が認識されることとなりました。

自然景観としての価値

花脊の三本杉は、その歴史的・信仰的な意義に加え、圧倒的な巨木としての存在感、そして日本の最高峰クラスの樹高を持つ自然遺産として、高い評価を受けています。京都府によって選定された「京都の自然200選」の一つにも数えられており、多くの人々がその雄大な姿を見に訪れます。自然が創り出した神秘と、歴史の中で培われた信仰が融合した、京都市を代表する巨木の一つと言えるでしょう。

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