若いヴェネツィアの女性の肖像

若きヴェネツィア女性の肖像：デューラーのイタリア体験

アルブレヒト・デューラーが1505年に制作した『若いヴェネツィアの女性の肖像』は、彼の二度目のイタリア旅行中に描かれた、楡の木板上の油彩による小さな半身像です。この作品は、ヴェネツィアで描かれた男性3点、女性2点の肖像画のうちの一つで、到着して間もなく描かれました。現在、この作品はウィーンの美術史美術館に所蔵されています。

作品の特徴

この肖像画では、モデルの女性の腕や手が描かれていないため、鑑賞者の視線は自然と彼女の顔に集中します。女性は、シュミーズ（下着）が見える、袖が結ばれた模様付きのガウンを着用しています。髪は柔らかい波のように顔を縁取り、後ろ髪は小さな布の帽子で覆われています。

この作品の調和と優雅さは、女性の淡く優美な肌、赤みがかった金髪、黒と真珠のネックレス、そして洗練された模様のドレスのコントラストによって生み出されています。これらの要素はすべて、平板な黒い背景の中で際立って見えます。ポーズや色使いは、1507年にデューラーが描いた『ヴェネツィア出身のドイツ人女性の肖像』と類似性が見られます。

デューラーは、ヴェネツィアの女性を描いた少なくとも2点の素描も残しています。一つは首元が大きく開いたモデルを、もう一つは肩を露出したモデルを描いており、その大胆さが際立っています。

巨匠ベッリーニとの出会い

当時、ドイツ国外ではまだ比較的知られていなかったデューラーですが、イタリア旅行中にジョヴァンニ・ベッリーニという巨匠と出会い、その才能に魅了されて友人となりました。デューラーはフランケン地方出身ですが、この作品にはベッリーニの影響が見られます。それは、柔らかなモデリング、劇的な明暗の対比、そして鮮やかな色彩や色調となって現れています。

作品の発見とモデルの謎

この作品は、1923年にリトアニアの個人コレクションで発見されるまで、デューラーの真筆として認められていませんでした。モデルとなった女性の身元は不明ですが、彼女の衣服や髪型から判断すると、ドイツ人ではなくヴェネツィア人であると考えられています。

この肖像画は未完成であるという説もあります。特に、胸元にある黒いリボンは、他の部分と比較すると粗い印象を受けます。

まとめ

『若いヴェネツィアの女性の肖像』は、デューラーのイタリアでの経験と、巨匠ベッリーニからの影響が色濃く反映された作品です。その美しさと謎めいた雰囲気は、今日でも多くの人々を魅了し続けています。

この作品は、デューラーの芸術的才能と、ルネサンス期のヴェネツィアの文化を垣間見ることができる貴重な作品と言えるでしょう。

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