苦力

苦力（クーリー）について

苦力（クーリー）とは、19世紀から20世紀初頭にかけて、中国人やインド人を中心としたアジア系の移民や、出稼ぎ労働者を指します。彼らは主に、大英帝国の植民地や旧植民地の地域で働くことを余儀なくされ、過酷な労働環境と低賃金の中で生活していました。苦力の移民は主に「客頭」と呼ばれるブローカーを通じて組織され、これらの労働力を売買する活動は「苦力貿易」と名付けられました。

歴史的背景

奴隷制度が廃止された後、ヨーロッパ諸国の多くの植民地やアメリカでは労働力の不足が問題となりました。その中で、イギリスの植民地であったインド亜大陸からの貧困層や、アヘン戦争後に広東や福建省からの労働者が、世界各地へと輸送されることになりました。最初はインド人労働者を指していた用語が、次第に中国人労働者に適用されるようになり、「苦力」と呼ばれるようになりました。

アヘン戦争後、清国はイギリスやアメリカと不平等条約を結び、これが清国民の誘拐を容易にしました。この状況の中、アメリカでは1847年と1849年に苦力貿易を禁止する法律を成立させましたが、実際には抜け道が存在し、商社は誘拐された労働者をラテンアメリカ諸国に送り出していました。具体的には、オリファント商会がペルーと契約し、厳選された「最高品質の苦力」を供給することで利益を得ました。

移民の実態

アメリカにおいては、苦力は期限付きの奉公として扱われ、借金を返済するまで自由になれない労働契約に基づいて働いていました。歴史的な背景から、彼らは自由意志で移民してきたとされていましたが、実際はさまざまな制約が存在しました。1868年には、アメリカとの間でスワード・バーリンゲーム条約が締結され、清国民の移住が認められることになりました。これにより、カリフォルニアでの労働力不足を解消する狙いがありました。

カリフォルニアでは、特に大陸横断鉄道の建設において多くの中国人労働者が活躍し、またオーストラリアやマレーシアにも多くの移民が送り込まれました。世界各地の華人社会の基盤は、こうした19世紀の移民によって形作られていったのです。

過酷な労働環境

苦力の労働条件は非常に厳しく、航海中や作業中に多くの人が命を落としました。また、渡航費用などはすべて彼らの借金となるため、ブローカーを介さずには他国での就職が困難な状況が続きました。さらに、日中戦争時には満州や日本の占領地でも苦力が用いられました。

第二次世界大戦後、中国共産党の成立に伴い、鎖国政策や強制労働が導入され、労働力は国内に振り向けられることになり、苦力としてのシステムは消滅していきました。

まとめ

苦力という言葉は、過去の厳しい労働環境と移民の歴史を反映しています。彼らの存在は、その後の華人社会の発展に大いに寄与したものの、その苦難の歴史は決して忘れてはならないものです。

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