英国王立勅許鑑定士協会

英国王立勅許鑑定士協会(RICS)の概要

英国王立勅許鑑定士協会(RICS)は、1868年に英国で設立された、土地、不動産、建設業界における国際的な専門家団体です。略称はRICS（アール・アイ・シー・エス）で、世界146ヶ国以上に15万人を超える会員を擁する大規模な組織です。

RICSは、単なる業界団体にとどまらず、会員への倫理基準や行動規範、技術基準の提供、政府やビジネス界への専門的な助言といった多岐にわたる活動を展開しています。米国不動産鑑定協会(AI)や日本の公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会(JAREA)のような専門家団体と類似する部分もありますが、その活動範囲は遥かに広範に及びます。RICSは、会員の自主規制を確立し、公共の利益を守る独立組織として運営されています。

歴史

RICSの起源は、産業革命後の英国の近代化と都市化を支えた49名の鑑定士たちによる、1868年の「Institution of Surveyors」設立に遡ります。その後、1881年にはヴィクトリア女王から勅許を受け、「Royal Institution of Chartered Surveyors」と改称、現在の名称となりました。協会の名称変更や勅許の授与は、その歴史と社会的地位の向上を物語っています。長い歴史の中で、RICSは常に業界の変革と発展に貢献し続けてきました。

世界的広がり

RICSはロンドンに本部を置き、英国国内には14の地域事務所を展開しています。会員数は世界中に広がり、特に近年は米国、ヨーロッパ、アジア、中東、北アフリカ、インドなどでの会員増加が著しいです。伝統的に会員数の多いカナダ、香港、オーストラリアに加え、グローバルな展開を加速させている様子が伺えます。

日本におけるRICS

日本においては、2012年8月に一般社団法人RICSジャパンが設立され、現在約180名の会員が活動しています。日本の不動産業界においても、RICSの専門性と国際的なネットワークは高く評価されており、国土交通省とも連携を模索するなど、日本の不動産市場における影響力も増しています。公益社団法人日本建築積算協会など、日本の関連団体との提携も進めています。

RICSの役割

RICSは、会員のための高水準な基準を維持し、公共の利益に貢献することを使命としています。その主な役割は以下の通りです。

倫理的・技術的基準の提供: 土地、不動産、建物分野の専門家に対し、倫理的かつ技術的な基準を提供することにより、専門家の行動を規律し、高い専門性を維持します。
専門基準と行動規範の確立: 会員による不正行為などを防ぎ、依頼者やサービス利用者を保護し、公共の利益に資する専門家集団としての枠組みを構築します。
政府・ビジネス界への助言: 中立的な立場で、政府やビジネス界に対し、専門的な助言や提言を行い、政策決定に貢献します。
会員研修: 会員に対し、最新の知識や技術を習得できる専門研修を提供することにより、常に高い専門性を維持できるように支援します。
RICSの地位向上: 世界の主要市場において、RICSの地位と基準が不動産に関する専門性の証として認識されるよう、積極的に活動しています。
市場情報の提供: 英国国内の不動産価格動向を調査した住宅価格指数などを発表し、市場の透明性向上に貢献しています。

会員資格

RICSの会員資格は、専門分野や経験年数に応じていくつかのレベルに分類されています。全ての会員は、専門性基準、専門教育、実務経験による厳格な審査を受けています。日本においては、日本不動産鑑定士協会連合会(JAREA)会員など、一定の資格・経験を有する者は、直接入会が可能です。

FRICS (Fellows): 業界の発展に大きく貢献したMRICS会員に与えられる称号。
MRICS (Professional Members): 土地、不動産、建設分野で高い専門性を持つ者に与えられる資格。
* AssocRICS (Associate members): エントリーレベルの資格で、関連分野での勤務経験または実務トレーニングを受けた者に与えられる資格。

MRICSとFRICS会員は、「[英国勅許鑑定士]」を名乗り、さらにMRICSやFRICSと付記することが許可されています。専門分野によっては、「勅許[積算士]」などの呼称も用いられます。

RICSは、不動産業界におけるグローバルな専門家組織として、今後もその役割を担い続け、業界の発展に貢献していくでしょう。

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