茂山宗彦

茂山宗彦：伝統と革新を繋ぐ狂言師

茂山宗彦は、1975年生まれの狂言方大蔵流の能楽師であり、俳優である。その名は、狂言界のみならず、テレビドラマや舞台など幅広い分野で知られている。

家系は、狂言の名家・茂山千五郎家。祖父、曽祖父に当たる四世・三世茂山千作から師事し、4歳にして初舞台を踏むなど、幼い頃から狂言の世界に深く関わってきた。幼少期から研鑽を積み重ね、東山高等学校卒業後、京都造形芸術大学（現京都芸術大学）を卒業。その後、京都能楽養成会に入会し、研鑽を続ける。

彼の狂言への情熱が本格的に燃え上がったのは、2000年頃に「釣狐」を披いた頃といわれている。伝統的な狂言を継承しつつも、現代社会に合わせた表現方法を探求する彼の姿勢は、多くの共感を呼んでいる。

若手狂言師として、精力的な活動を展開。従弟や弟と共に「花形狂言少年隊」を結成し、若い世代へのアプローチを試みたり、「心・技・体、教育的古典狂言推進準備研修練磨の会（TOPPA!）」を仲間と共に主催するなど、伝統芸能の普及にも尽力している。さらに、正邦、茂、逸平、童司と共に結成した「HANAGATA」は、2020年に「Cutting Edge KYOGEN」と改名し、現代的なアプローチで狂言の魅力を発信し続けている。

俳優としての活動も顕著で、NHK連続テレビ小説『ちりとてちん』では、徒然亭小草若役を熱演。彼の考案による決め台詞「底抜けに…」のポーズは、大きな話題となった。他にも数々のテレビドラマやミュージカル、ドキュメンタリー番組に出演し、その幅広い才能を発揮している。司会やコメンテーターなど、テレビ番組への出演も多く、狂言の枠を超えた活躍ぶりを見せている。

2014年には「京都府文化賞奨励賞」を受賞、2017年には日本能楽会会員（重要無形文化財保持者総合認定）となるなど、その功績は高く評価されている。狂言師としての高い技量、俳優としての表現力、そして、伝統芸能の普及への貢献という、三拍子揃った稀有な存在である。

私生活では、2007年に結婚。趣味は釣りという一面も持ち、その多様な経験が、彼の表現の幅を広げていると言えるだろう。祖父との関係性においては、性格が似ていたために衝突もあったと語っており、伝統を受け継ぐことと、自身の道を切り開くことの間で葛藤もあったのではないかと推察される。

茂山宗彦は、伝統を尊重しながらも、常に新しい表現に挑戦し続ける、まさに現代を代表する狂言師と言えるだろう。彼の今後の活躍から、ますます目が離せない。

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