茨城県医師会

茨城県医師会は、茨城県内に活動基盤を置く医師たちが結集して設立された一般社団法人であり、日本医師会の地域における重要な構成団体です。県民の皆様の健康維持・増進、そして地域医療体制の充実を目指し、様々な活動を展開しています。本部は茨城県水戸市にある茨城県メディカルセンター内に置かれています。

本会は県全体の医師会として機能すると同時に、県内各地に複数の市郡医師会や大学医師会といった地域単位の組織を有しており、それぞれの地域の実情に合わせた医療活動や医師間の連携強化を図っています。これにより、県内すみずみまで質の高い医療サービスを提供するための基盤を支えています。

2021年夏、茨城県内で開催が計画されていた国内最大級の野外音楽イベント「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」に関して、本会が大きな関与を示すこととなりました。当時の新型コロナウイルス感染症の拡大状況を踏まえ、本会はイベント主催者である茨城放送に対し、感染リスクの増大を理由にイベントの中止を強く要請しました。主催者側は、自治体や会場側との綿密な協議を経て、感染対策を徹底した上での開催を目指して準備を進めていましたが、開催予定日の約1ヶ月前という直前のタイミングでの医師会からの要請を受け、やむを得ずイベントの中止を決定するに至りました。この決定に際し、イベントの総合プロデューサーからは、直前の要請であり対応が極めて困難であったこと、そして中止に対する深い無念の思いが表明されました。

この一連の経緯は、社会的な大きな反響を呼びました。開催中止を残念に思う参加予定者やアーティストからは、落胆や医師会への批判の声が相次ぎ、医師会には2000件を超える抗議の電話やメールが殺到する事態となりました。本会の当時の会長は、騒動後の会見で主催者への中止決定への謝意を表しつつ、抗議が殺到したことに対しては困惑を示しました。このような批判が大きくなった背景には、当時、感染対策を徹底するとして東京オリンピックが開催されたにも関わらず、同等の対策を図っていたとされる大規模イベントが中止に追い込まれたことへの疑問や、時期を同じくして県内の一部の医師らによるクラスター発生が報じられ、医療提供体制に影響を与えたとされる事実があり、「身内に甘いのではないか」といった医師会への不信感が広がったことが影響しているとの指摘があります。

この問題の後、ROCK IN JAPAN FESTIVAL事務局は、2022年以降の同イベントの開催地を、これまでの国営ひたち海浜公園（茨城県）から千葉県の蘇我スポーツ公園へ変更することを発表しました。事務局は移転理由を感染対策の徹底と説明していますが、この開催地変更の背景には、前年に茨城県医師会との間で発生した中止要請問題が大きく影響しているとの見方が一般的です。

茨城県医師会は、県内の医療を支える中心的な存在である一方で、社会的な感染症対策の局面においては、県民生活や大規模イベントにも影響を及ぼしうる重要な役割を担っています。その活動は、県民の健康増進と地域医療の発展に不可欠なものですが、同時に社会情勢に応じた判断や行動には、常に高い注目が集まる立場にあると言えます。

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