草の陰刻

草の陰刻

『草の陰刻』は、松本清張による長編推理小説であり、1964年から1965年にかけて『読売新聞』に連載された後、1965年11月に講談社から刊行されました。この作品は、松山地方検察庁で発生した失火事件を背景に、青年検事の瀬川良一が直面する挫折と希望を描いています。物語は、1964年5月16日の夜、松山地方検察庁の倉庫から出火するところから始まります。

あらすじ

事件当夜、検察庁の第二倉庫が炎に包まれ、焼け跡から事務官の平田健吉の焼死体が発見されます。平田は火事の前、同僚の竹内平造と飲み屋で過ごしていましたが、酔った竹内は記憶を失い、気付いたときには40キロ離れた町にいるという異様な状況です。
若手検事の瀬川は、火葬された書類の復元を試みる一方、竹内の記憶と目撃者の証言に矛盾が生じていることに気付くものの、結局、出火原因は漏電による失火として処理されます。
しかし、平田が担当していた古い刑事事件簿の一部が行方不明であることから、瀬川は疑念を抱きます。
この頃、平田と当時の担当検事であった大賀庸平との関連が浮かび上がりますが、残念ながら大賀は不幸にも交通事故で亡くなってしまいます。
調査を続ける瀬川は、火災との関連を指摘する脅迫電話を受け取るものの、それにもめげずに大賀の娘である冴子に接触し、事件の手がかりを探ります。

主な登場人物

• - 瀬川良一：松山地方検察庁の31歳の検事。独身で東京出身。事件解決に奔走する。
• - 平田健吉：出火事件で死亡した松山地検の事務官。危機的な状況に巻き込まれる。
• - 竹内平造：事務員であり、事件後に神経衰弱を患う。
• - 大賀庸平：昔の検事で、事件の背景に関わる元職員。
• - 大賀冴子：大賀庸平の娘で、父の死と出火事件の関連について疑問を持つ。

テレビドラマ化

この小説は、1994年8月にフジテレビで放映されたドラマ版で注目を集めました。視聴率は17.6%を記録し、サスペンスと推理の要素が視聴者を魅了しました。

『草の陰刻』は、過去の事件の真相に迫りつつ、現代の法律や倫理について考えさせる重要な作品です。また、松本清張特有の緻密な人物描写や、ストーリー展開が、多くの読者の心をつかんで離さない理由でもあります。

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