荒井陸男

荒井 陸男（あらい ろくお）: 厳毅な洋画家

荒井陸男は、1885年9月1日に東京・芝区に生まれた日本を代表する洋画家です。彼は、旧制麻布中学校や同志社などで学びましたが、若い頃から画家になりたいという強い思いを抱いていました。その情熱から、1909年にイギリスへ渡り、ロンドンの美術学校で本格的に絵画の技術を修得します。

1914年、第一次世界大戦が勃発すると、彼は海軍従軍画家として活躍することになります。この機会に、海洋画や戦争画を描くようになり、その分野においてトップの地位を築くことになります。特に、戦争の悲惨さや英雄的な瞬間を捉えた作品が多く、視覚的に強いメッセージを持っていました。

彼の代表作の一つとして、『水師営の会見』があります。この作品は明治神宮絵画館に所蔵されており、日露戦争の歴史的な瞬間を鮮やかに描写しています。荒井は1928年にこの作品を完成させ、以降も歴史をテーマにした作品を多く残しました。特に、1928年には『旅順開城、乃木大将とステッセル会見の図』を完成させ、さらに1938年にはオーストラリアを訪れ、第一次世界大戦中の国際共同作戦を題材にした『軍艦伊吹、豪州ニュージーランド軍隊護衛』を制作しました。

また、彼は1939年に発足した陸軍美術協会の設立にも貢献し、戦時中の芸術活動に一層の力を入れました。しかし、1945年5月の東京大空襲により、東京の自宅が焼失し、長野県軽井沢に移住することを余儀なくされました。

軽井沢での生活では、徳川家正の肖像画を手掛けたほか、終戦後にはアメリカ軍の将校たちの肖像も描きました。ロバート・アイケルバーガー中将や、最高裁判所長官の三淵忠彦など、様々な著名人の絵を制作し、その技術と表現力は高く評価されました。

荒井は1972年7月6日に心不全で亡くなり、享年86歳でした。彼の告別式は世田谷区のカトリック松原教会で行われ、最後の旅立ちを見送られました。彼の遺骨は多磨霊園に埋葬されています。彼の作品や教育に対する情熱は今日でも多くの人々に影響を与え続けており、日本の洋画における重要な存在として、その名を刻まれています。

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