荒川俊三

荒川俊三

1948年6月25日、兵庫県に生まれた荒川俊三は、元プロ野球選手として、その短いキャリアの中で特異な出来事を経験した人物です。

兵庫高校時代、荒川は野球部に所属し、1956年の第38回選抜高等学校野球大会に出場しました。主に「一番・センター」としてチームを牽引しましたが、初戦で高知高校に惜しくも敗れ、甲子園の舞台で長く活躍することはできませんでした。

高校卒業後、多くの球児がそのまま野球の道を進む中、荒川は異業種であるかまぼこ製造業に就職するというユニークなキャリアを選択します。しかし、野球への情熱を捨てきれなかったのか、その後プロ野球球団である近鉄バファローズの入団テストに挑戦することを決意しました。

このテストで、荒川は秘められたポテンシャルを発揮します。特に打撃において高い評価を得ただけでなく、身体能力が問われる100メートル走や遠投でもテスト生の中でトップクラスの成績を収めました。その結果、ドラフト会議を経ずに球団と契約する、いわゆるドラフト外入団という形で、1966年に近鉄バファローズの一員となりました。なお、高校時代は大野姓を名乗っていましたが、プロ入りを機に荒川姓へと改姓しています。

近鉄に入団後、荒川は主に控えの内野手として登録されました。当時の近鉄には多くのタレントがおり、彼自身もプロの壁にぶつかったのか、公式戦で目立った出場機会を得ることは極めて稀でした。

そんな荒川にとって、プロ野球キャリアにおける最も注目すべき出来事は、1968年7月21日に東京スタジアムで行われた東京オリオンズとの試合で起こりました。この試合中に発生した激しい乱闘の最中、もみ合いとなる中で、球界を代表する打者であったオリオンズの榎本喜八選手に対し、バットで殴打するという行動に出てしまいます。この一撃により、榎本選手は昏倒するという重傷を負いました。

この事件は大きな波紋を呼び、同年8月9日には、東京スタジアムを管轄する南千住警察署によって暴行事件の容疑で書類送検される事態に発展しました。しかし、両球団間の話し合いにより示談が成立し、近鉄とオリオンズは警察署に対し、始末書及び今後二度と暴力行為を起こさないという誓約書を提出することで、事件としての法的措置は回避され、解決に至りました。

法的には解決したものの、球界における影響は決して小さくありませんでした。球界の至宝とも称される榎本選手に大怪我を負わせたという事実は重く受け止められ、事件後、荒川はチーム内外の関係者から厳しい視線を浴びることになります。一部からは「白い目で見られる」といった声も上がり、チーム内でも孤立し、「村八分」に近い扱いを受けたと言われています。

このような状況下で、荒川のプロ野球キャリアは短命に終わります。1970年のキャンプ中に、彼は現役引退を決意しました。

プロ野球界を去った後、荒川は船員に転身したとされています。しかし、その後の彼の人生や消息については、現在も明らかになっていません。短い現役生活の中で、一度は球界に衝撃を与える出来事を起こした荒川俊三という選手は、多くの謎を残したまま、プロ野球の表舞台から姿を消しました。

背番号は、1967年から1969年までの間、「53」を着用していました。彼の野球人生は、順調なプロキャリアとは異なる、波乱と不確実性に満ちたものであったと言えるでしょう。

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