菅谷寿鴻

菅谷 寿鴻（すがや としひろ）

菅谷寿鴻は、日本の著名な工学者であり、特にDVDの技術革新で知られています。彼は、東芝リサーチ・コンサルティング社の社長附を務めるほか、東芝デジタルメディアネットワーク社のコアテクノロジーセンターで技術顧問を担い、電気通信大学の特任教授としても活動しています。特に、彼が開発したDVDのピット形状最適化技術は、高記録密度化を実現する上で重要な役割を果たしました。

業績

1990年代の初め、映像を高解像度で扱える画像圧縮技術MPEG-2が国際的に標準化されると同時に、より大容量の光ディスクが求められるようになりました。これにより、CDサイズのデジタルビデオディスク、通称DVD（Digital Versatile Disc）の開発が急がれました。しかし、映画1本分のデジタル情報は、MPEG-2を用いてもCDの6倍以上の容量が必要であり、従来のCD技術だけではこの要求に応えることができませんでした。そこで、新たな高密度化技術の開発が求められました。

菅谷は、この急速に変化する映像・情報社会のニーズを敏感に察知し、赤色半導体レーザ、高NA対物レンズ、0.6mm厚基板を用いた高密度化技術を推進しました。さらに、光ディスクに情報として記録される凹み、すなわちピットの形状を最適化することで、高密度化を実現しました。これにより、DVDの片面で130分の映像再生を世界で初めて達成しました。

その後、DVDの標準化に向けた技術支援も行い、1995年末には、東芝を中心とした世界10社によるDVD規格の統一に大きく貢献しました。菅谷はDVDフォーラムの主要メンバーとしても活動し、各種DVDフォーマットの開発に関与しました。特に、Verification Policy Committee（VPC）の共同議長として、DVD製品（ディスクおよび装置）の試験規格の開発を主導し、国際標準化および日本工業規格（JIS）の整備を推進しました。

彼の研究開発の成果によって実現したDVDは、現在、全世界で人々の文化生活の向上に寄与し、電子産業界の活性化にも貢献しています。

経歴

菅谷は1969年3月に電気通信大学の電気通信学部電波工学科を卒業し、その後1971年3月に同大学院の電気通信学研究科電波工学専攻を修了しました。卒業後、東京芝浦電気株式会社（現在の東芝）に入社し、以降、同社及び関連企業で大容量記憶装置関連の技術開発に従事してきました。

2008年1月には、東芝リサーチ・コンサルティング株式会社の社長附に就任しました。

受賞歴

菅谷はその業績により、多くの賞を受賞しています。1997年5月には電子情報通信学会業績賞、1998年4月には科学技術庁研究功績者表彰を受けました。さらに、2003年には情報処理学会の情報規格調査会標準化貢献賞、2004年には発明協会全国発明表彰の日本経済団体連合会会長発明賞を授与されました。2008年には紫綬褒章が与えられ、2012年には国際規格開発賞を受賞しています。

これらの受賞は、菅谷の研究や技術開発が業界に及ぼした影響の大きさを示しています。

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