菊水寺 (秩父市)

菊水寺について

菊水寺（きくすいじ）は埼玉県秩父市に位置する曹洞宗の寺院です。寺院の正式名称は「大桜山長福寺」であり、宗教法人名も「宗教法人長福寺」となっていますが、秩父札所としての「菊水寺」が広く知られているため、本稿では「菊水寺」の名称で記述します。

歴史的背景

この寺院は奈良時代に行基によって開山されたと伝えられています。当時、近隣の八人峠には悪名高い8人の盗賊がいて、通行人から金品を奪っていました。そんな状況で、行基という僧侶がその峠を通りかかった際、盗賊たちに襲われました。しかし、行基はその法力を使って盗賊たちを金縛りにし、彼らに痛みを与えました。彼らは行基に許しを乞い、その後、行基から悪行の結果として地獄に落ちることを警告され、近くの霊泉「菊水」を教えられました。そして、行基が彫った観音菩薩像を手渡され、その像を草庵に祭ることで、盗賊たちは改心し、真っ当な道を歩むようになったと言われています。このエピソードが「菊水寺」の起源とされています。

1569年には、武田氏と後北条氏の戦が原因で寺は全焼しました。これにより、観音像は近隣の「長福庵」に移されました。その後、1592年には長山賢道によって長福庵が整備され「長福寺」と名付けられました。えこれらの歴史を経て、菊水寺としての名が確立されていきました。

文化財と特異な絵図

菊水寺には「子返しの図」という特殊な絵図が展示されています。この絵図は、間引きの実態を描いたもので、新生児を無理やり圧殺する母親の姿を描写し、その残酷さを広く知らしめようとするものでした。この絵図を奉納した井上如常は、間引きの中止を訴えた人物として知られています。これは、胎児や新生児の保護を促すための一つの試みでもあり、深いメッセージを含んでいます。

また、菊水寺聖観音像は埼玉県の指定有形文化財であり、昭和29年に指定されました。その他にも、「子返しの図」や「孝行和讃の図」などの文化財が存在し、これらも秩父市の指定有形文化財に認定されています。更に「延命山菊水寺」としての指定史跡もあり、多くの文化的価値を有しています。

交通アクセス

菊水寺へのアクセスも比較的容易です。皆野大塚ICからは車で約13分の距離にあります。また、西武秩父駅または秩父駅からは、西武観光バスにて「小鹿野車庫・栗尾ゆきに乗り、「泉田」で下車後、徒歩約35分です。さらに「吉田総合支所・吉田元気村ゆき」では、「吉田下橋」または「吉田仲町」で下車し、徒歩で約22分の距離にあります。

このように、菊水寺は深い宗教的意義や文化的価値を持つ寺院であり、訪れることで歴史の重みを感じることができる場所です。

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