華人労務者

華人労務者について

華人労務者とは、日中戦争の際に日本が中国から雇用した労働者のことです。日本の産業界は戦争による労働力不足に直面しており、この問題を解消するために中国大陸から人材を確保しようとしました。

経緯と閣議決定

1942年11月27日、当時の東條内閣は「華人労務者内地移入二関スル件」を閣議決定しました。この決定は、日本の企業からの労働力の確保に応じたものであり、華人労務者の待遇について具体的に定められました。次官会議では、「契約期間は2年」「賃金の支払い」「送金の自由」「持ち帰り金に特別制限は設けない」といった条件が協議され、企業は一日5円の賃金を支払うことが決まりました。

関与した企業

この華人労務者の供給に関わった企業は多岐にわたります。その中には、鹿島組や大成建設、三井鉱山など35社（135事業所）が含まれています。これらの企業は厚生省に必要な人数を申請し、運輸省と軍需省が協議して労働者の割り当てを決めました。さらに、日本の要請を受けて中国側の労務統制機関が労務者を集めることになりました。

日本への移送と労務状況

労務者たちは、労務統制機関の職員や日本の軍隊の協力のもとに日本へ移送されました。その中には、戦争捕虜を利用したという証言も残っています。外国省の報告書によると、集められた華人労務者の75％は農民であり、38,935人が日本全国の事業所に送られ、6,830人が死亡した数値が報告されています。また、炭鉱などの現場では、劣悪な労働条件が関与し、暴力的な管理が行われたという事例も存在しています。

歴史的背景と損害賠償請求裁判

華人労務者が残した負の遺産は、1985年に起きた花岡事件に端を発する一連の裁判へとつながります。耿諄という指導者が蜂起し、騒乱の後、多くの労働者たちは悲惨な運命に見舞われました。その後、様々な企業に対する損害賠償請求が続き、特に西松建設や三菱マテリアルについては、強制連行や労働条件に関する法廷での争いが行われました。

西松建設裁判

2007年、西松建設を相手に起こされた訴訟では、強制連行の事実が認められつつも、請求権放棄により訴えは却下されました。しかし、企業側は訴訟外での救済措置を求められるよう求められました。

三菱マテリアル裁判

三菱マテリアルは、2016年に生存する元華人労務者に対して直接謝罪し、歴史的責任を認めるとともに、基金を設立して被害者のために対応することを決定しました。この和解は、日中関係の改善にも寄与するものと考えられています。

終わりに

華人労務者の歴史は、日本と中国の間に残された重要な問題であり、過去を振り返り、被害者への理解と補償を求める動きが続いています。今後もこの問題に関する取り組みが求められるでしょう。

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