著作権の登録制度

日本の著作権登録制度：権利保護と実務的な効果

日本の著作権法では、著作権の取得に登録は必須ではありません。創作時点で自動的に権利が発生する「無方式主義」を採用しているためです。しかし、特許権や商標権と異なり、登録制度が設けられていることには、重要な意味があります。本稿では、日本の著作権登録制度の目的、効果、各種制度、手続きについて詳しく解説します。

著作権登録の目的と効果

登録制度は、権利の発生を目的とするものではありません。その主な目的は、以下の2点です。

1. 事実関係の証明の容易化: 著作物の創作日、著作者などの事実関係を明確に証明することで、権利侵害訴訟における立証を容易にします。特に、プログラムのように容易に改変可能な著作物では、創作日を証明することは重要です。登録することで、登録日をもって創作日と推定される「推定効」が働きます。
2. 権利変動の公示: 著作権の譲渡などの権利変動を公示し、第三者に対抗可能にします。登録されていない権利譲渡は、後から権利を主張する第三者に対抗できません。

プログラム著作物を例にした説明

X社が作成したプログラムAが、Y社によって無断複製されたとします。X社がY社を訴える場合、「X社がプログラムAの著作権を有する」「Y社がプログラムAを複製した」ことを立証しなければなりません。

プログラムAの創作日を証明することは容易ではありません。しかし、X社が創作年月日を登録していれば、登録日をもって創作日と推定され、立証が容易になります。さらに、プログラムの登録には複製物の提出が義務付けられているため、登録時のプログラムの内容も明確になります。

ただし、著作権法は「先願主義」を採用していないため、登録がY社より早かったとしても、X社がプログラムAの著作権を独占できるわけではありません。また、Y社がプログラムAを参考に作成したかどうかも立証しなければなりません。

第三者対抗要件

著作権の譲渡は契約締結で有効になりますが、第三者に対抗するには登録が必要です。A氏がB氏に著作権を譲渡しても、登録しなければ、A氏からC氏への譲渡も有効となり、二重譲渡が発生する可能性があります。登録されたC氏の方が優先されます。

各種登録制度

日本の著作権法では、以下の登録制度が規定されています。

1. 実名の登録: 無名または変名で公表された著作物の著作者が、実名で登録することで、著作権の保護期間を延長できます。
2. 第一発行年月日等の登録: 著作物の最初の発行日または公表日を登録することで、その日を発行日または公表日と推定できます。
3. 創作年月日の登録: プログラム等の創作年月日を登録することで、その日を創作日と推定できます。ただし、創作後6ヶ月以内に行う必要があります。
4. 著作権の移転・処分に関する登録: 著作権の移転や処分、質権の設定などを登録することで、第三者に対抗できます。
5. 著作隣接権の登録: 著作隣接権についても、著作権の登録規定が準用されます。
6. 出版権の登録: 出版権の移転や処分などを登録することで、第三者に対抗できます。

登録手続とプログラム著作物の特例

登録手続きは文化庁長官が行い、実名登録は官報で告示されます。審査は形式的なもので、著作物の内容までは審査されません。登録は自身で行うことも、行政書士などに依頼することもできます。

プログラム著作物の登録は、複製物の提出が必要など、他の著作物とは異なる特例があります。

発明の保護との関係

発明そのものは著作権の対象ではありません。発明の内容を記述した論文などは著作権の対象になりますが、発明そのものを独占することはできません。発明を保護するには、特許権や実用新案権を取得する必要があります。

まとめ

日本の著作権登録制度は、権利の発生ではなく、権利行使の円滑化を目的としています。登録することで、権利の証明や第三者への対抗力を高めることができます。特に、プログラムなどの著作物や権利の譲渡においては、登録が重要となります。しかし、登録はあくまでも権利行使を容易にするための手段であり、権利の発生とは無関係であることを理解しておくことが重要です。

もう一度検索