著保内野遺跡

著保内野遺跡（ちょぼないのいせき）

北海道函館市尾札部町に位置する著保内野遺跡は、縄文時代後期後半（約3200～3500年前）の集団墓地です。渡島半島の南茅部周辺、内浦湾沿いの低位海岸段丘上に形成されました。この遺跡は、縄文時代の精神文化や信仰、祭祀の実態を解明する上で非常に重要な役割を果たしています。

概要

遺跡からは複数の集団墓が発見されており、特に有名なのは中空土偶が出土した墓です。また、別の墓からはヒスイ製の勾玉や赤漆が塗られた櫛の一部なども見つかっています。これらの出土品は、当時の人々の生活や文化を知る上で貴重な手がかりとなります。

発見の経緯

著保内野遺跡が発見されたのは1975年（昭和50年）のことです。地元の主婦が農作業中に土偶を発見したことがきっかけとなり、南茅部町教育委員会（当時）が緊急発掘調査を実施しました。その結果、出土地周辺が縄文時代後期の墳墓群である可能性が浮上し、遺跡は「著保内野遺跡」として周知の埋蔵文化財包蔵地となりました。

しかし、初期の発掘調査は面積や期間に制約があり、遺跡全体の詳細な解明には至りませんでした。そのため、再調査の必要性が指摘されていました。2006年（平成18年）には、出土遺構の再調査と正確な出土位置の記録を目的とした再調査が行われました。この調査によって、遺跡一帯から勾玉や漆片などが発見され、改めてこの遺跡が縄文時代後期の集団墓であることが確認されました。

中空土偶

遺跡から出土した土偶は、国内最大級の大きさを誇り、薄く精巧な作りと写実的な表現、優れた文様構成が特徴です。縄文時代後期の土偶造形の到達点を示すものとして極めて貴重であり、1979年（昭和54年）に重要文化財に指定され、その後2007年（平成19年）には北海道初の国宝に指定されました。この土偶には、出土した南茅部の「茅」と、中空土偶の「空」をとって「茅空（かっくう）」という愛称がつけられています。

環状配石

遺跡からは環状配石遺構と土坑墓群も確認されており、縄文時代後期後半に集団墓域として利用されていたことがわかっています。環状配石遺構は直径6メートルと小規模ながら2重の輪になっており、その周囲を土坑墓が取り囲んでいると考えられています。

現在の状況

著保内野遺跡は現在、私有地に埋め戻されており、正確な所在地はわかりにくくなっています。しかし、出土した遺物は函館市縄文文化交流センターに保存・展示されており、一般の人々も見学することができます。

沿革

1975年（昭和50年）：発掘調査（対象面積12平方メートル）
2006年（平成18年）：発掘調査（対象面積400平方メートル）

参考文献

函館市教育委員会監修「函館市縄文文化交流センターガイドブック」2015年

関連項目

函館市縄文文化交流センター
縄文時代の遺跡一覧
北海道・東北地方の史跡一覧
* ストーンサークル

もう一度検索