蒙古斑

蒙古斑とは

蒙古斑（もうこはん）は、生まれたばかりの赤ちゃんや幼児の皮膚に見られる、青みがかった灰色のあざのことです。主に背中や腰、お尻のあたりに現れることが多く、発疹のように見えることもあります。一般的には、3歳から5歳くらいまでに自然に消えていくことがほとんどです。

蒙古斑の特徴

蒙古斑は、多くの場合、一つまたは複数の斑点として現れます。主な出現部位は、腰椎、仙椎、臀部、脇腹、肩などですが、まれに手足や顔などの部位に現れることもあります。特に臀部以外の場所に現れるものを「異所性蒙古斑」と呼びます。

蒙古斑の原因

蒙古斑は、胎児の皮膚の色素細胞であるメラノサイトが、皮膚の深い部分（真皮）に移動する際に、何らかの刺激を受けることで発生すると考えられています。性別による発生率の違いはなく、男女ともに同じ割合で現れます。

真皮メラノサイトは、蒙古斑以外にも、太田母斑や色素性血管母斑症など、さまざまな色素性病変に関わっています。

蒙古斑の歴史

江戸時代には、妊娠中の性行為による出血の跡と考えられていたこともありました。1885年、ドイツ人医師のエルヴィン・フォン・ベルツが、このあざを「モンゴリアンスポット」と名付け、モンゴロイドの特徴としました。その後、1930年に師岡浩三が詳細な研究を行い、胎児の3ヶ月頃から蒙古斑細胞が出現し、2歳頃まで増加することを発表しました。

蒙古斑の分布

蒙古斑は、モンゴル人、中国人、日本人、韓国人などの東アジア人や、アメリカ大陸先住民に多く見られます。しかし、ネグロイドにも比較的高い頻度で出現します。一方で、アイヌ民族にはまれにしか見られません。

発生率は、モンゴル人の幼児で約95%、その他の東アジア人の幼児で約80%、ヒスパニック系の幼児で40-50%、インド・ヨーロッパ語族の幼児で1-10%程度と言われています。

蒙古斑に対する誤解

欧米では、蒙古斑についての知識がないため、児童虐待によるあざと誤解されることがあります。特に、ソーシャルワーカーや医療スタッフが誤解することがあるため注意が必要です。

日本語における表現

蒙古斑が乳幼児の臀部に出現することから、未熟な子供や若者を指して「尻が青い」「青二才」「まだ青い」という表現が使われることがあります。

異所性蒙古斑について

異所性蒙古斑は、臀部以外の部位に現れる蒙古斑のことで、成長しても消えにくい傾向があります。良性であるため治療の必要はありませんが、精神的な苦痛を和らげるためにレーザー治療が行われることもあります。しかし、異所性蒙古斑は皮膚の深い部分に色素が存在するため、治療効果は得られにくいとされています。早期に治療を開始すると効果が得られやすいとの報告もあります。

蒙古斑の治療

蒙古斑のほとんどは、10歳前後までに自然に消えるため、経過観察が基本です。しかし、1～2%の人は思春期を過ぎても蒙古斑が残ることがあります。レーザー治療以外に有効な治療法は確立されていません。

まとめ

蒙古斑は、乳幼児に見られる一般的な皮膚の変化であり、多くは成長とともに自然に消失します。しかし、まれに成人まで残ることもあるため、気になる場合は医師に相談しましょう。

参考資料

日本形成外科学会、日本創傷外科学会、日本頭蓋顎顔面外科学会『形成外科診療ガイドライン1 皮膚疾患』金原出版、2015年。

関連情報

母斑
モンゴル

外部リンク

Mongolian Spot / Child Fleck : 英語で書かれた蒙古斑の説明資料（海外で児童虐待と間違われた際に提示できます）

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