蒼海の世紀

蒼海の世紀

『蒼海の世紀』は、原作を鈴木貴昭、作画を野上武志が手がける架空海洋戦記漫画です。元々は野上武志の同人サークル『Firstspere』で頒布された同人誌から始まり、後にCR COMICS（ジャイブ）より全7巻が刊行されました。コミックス版には「王子と乙女と海援隊」という副題がついています。

概要

この作品は「もし、坂本龍馬が暗殺されずに生存していたら？」という大胆な仮定から始まる物語です。龍馬生存という史実との相違点に加えて、以下のような変更が加えられています。

旧幕府軍のハワイ亡命と「太平洋共和国」の成立
榎本武揚率いる旧幕府軍は、史実とは異なり北海道ではなくハワイへ逃れ、アメリカ合衆国の勢力を排除して「ハワイ共和国」を樹立します。坂本龍馬の尽力もあり、日本からの移民が多数入植。ハワイ共和国は後に「ポリネシア連合」を経て「太平洋共和国」へと発展します。
日露戦争の展開
日露戦争は日本が陸戦で苦戦し、大陸および朝鮮半島から日本軍は撤退。日本海海戦は日本の勝利に終わるものの、全体としては日本側の敗北という形になります。しかし、大陸への橋頭堡として欧米からの資金が流入し、日本経済は一時的に好転。朝鮮半島はロシアの植民地となります。
日本の海洋国家としての道
大陸への足掛かりを失った日本は、必然的に海洋国家としての道を歩むことになります。
海援隊の役割
日露戦争において、武器弾薬や食糧の補給を担った坂本龍馬率いる海援隊、陸援隊の活躍が、日本軍の補給重視の堅実な戦略に影響を与えます。

野上武志の同人誌がベースとなっていることは前述の通りですが、コミックス7巻に掲載された鈴木貴昭の後書きによると、企画立案のきっかけは、当時仕事のなかった野上武志からの依頼でした。『萌えよ!戦車学校』で注目を集め始めていた野上武志の人気は高く、予想以上の販売数を記録。その後、ジャイブから商業出版の声がかかり、加筆修正を経てコミックスとして販売されました。鈴木貴昭の構想では、本作はプロローグであり、アメリカ合衆国と連合した日本とドイツによる第二次世界大戦がメインとなる予定でした。また、後年には本作の設定を流用した、現代版とも言えるテレビアニメ『ハイスクール・フリート』が制作されています。

あらすじ

物語は、日露戦争後の世界を舞台に、海洋国家として発展した日本を舞台に繰り広げられます。主人公の李家鳴海は、大韓帝国帝室の庶子でありながら、日本に亡命し海軍兵学校に入学。近海航海訓練で海援隊の戦艦みかさに乗艦したことをきっかけに、海援隊に入隊します。彼は、持ち前の機転と精神力で数々の困難に立ち向かい、成長していく姿が描かれています。

主な登場人物

李家 鳴海（りのいえ なるみ）
主人公。大韓帝国帝室の庶子。日露戦争中に日本に亡命し、海軍兵学校を経て海援隊に入隊。いつも笑顔を絶やさず、一見頼りないが、非常に強い精神力と優れた頭脳の持ち主。海援隊の女性隊員からは「王子」と呼ばれ親しまれています。
鈴木 穂積（すずき ほづみ）
ヒロイン。海援隊の要人警護部所属。気が強く喧嘩っ早い性格。鳴海の護衛役を務めるうちに、彼に惹かれていきます。
才谷 美紀（さいたに みき）
海援隊大佐。戦艦みかさの艦長。坂本龍馬の実子であり、日本海海戦では連絡将校として東郷平八郎の補佐を務めました。
東郷平八郎
海援隊元帥。日本帝国海軍大将として日本海海戦を勝利に導いた後、海援隊に移籍しました。
坂本龍馬
海援隊および坂本商会の創設者。現在はハワイで隠棲していますが、その影響力は依然として大きく、物語の鍵を握る人物です。

外部リンク

蒼海の世紀オフィシャルサイト

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