蔵屋美香

藏屋美香（くらや みか）は、1966年に千葉県で生まれた、日本の現代美術界を代表するキュレーターであり、写真評論家としても活動しています。現在は、歴史ある横浜美術館の館長を務め、その運営と日本の美術振興に貢献しています。また、多摩美術大学の客員教授としても教鞭を執り、次世代の美術専門家の育成にも力を注いでいます。長年の功績に対し、倫雅美術奨励賞を受賞するなど、その活動は多岐にわたります。

藏屋氏の学歴は、美術と教育学にまたがるユニークなものです。女子美術大学芸術学部絵画科の洋画（油画）専攻で美術の実技と理論を学び、1988年に卒業しました。さらに、教育分野への関心から千葉大学大学院教育学研究科に進み、1992年に修士課程を修了し、教育学修士の学位を取得しています。この教育学のバックグラウンドは、美術館での教育普及活動や、大学での指導においても活かされています。

美術館キャリアの出発点は、1993年に研究員として勤務を開始した東京国立近代美術館です。日本の近現代美術の中心的な機関である同館で、長年にわたり様々な展覧会の企画や作品研究に携わりました。研究員としての活動と並行して、教育機関での指導も積極的に行っています。2002年には千葉大学大学院、2004年には一橋大学大学院でそれぞれ非常勤講師を務めました。特に2004年には、国際的な視野を広げるため、ロンドンの著名な現代美術機関であるホワイトチャペル・ギャラリーにおいて研究員としての経験を積んでいます。その後も、2006年からは多摩美術大学の共通教育、2013年からは同大学美術学部絵画学科油画専攻で非常勤講師を務めるなど、継続的に教育活動に関わっています。東京国立近代美術館では、組織内でのキャリアを積み上げ、2008年には美術課長、2016年には企画課長といった要職を歴任しました。これらの役職を通じて、同館のコレクション形成、展覧会計画、運営戦略などに深く関与し、日本の美術史研究および現代美術の動向を牽引する役割を果たしました。

藏屋氏のキュレーターとしての手腕は、国際舞台でも高く評価されています。最も顕著な功績の一つが、2013年に開催された第55回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展における日本館での活動です。この世界最高峰の現代美術展において、藏屋氏は日本代表作家を選出し、日本館の展示構成を担当しました。そのキュレーションは国際的な批評家や観客から絶賛され、日本館がヴェネチア・ビエンナーレ史上初めて「特別表彰」を受賞するという歴史的な快挙に結びつきました。これは、日本の現代美術のレベルの高さを示すとともに、藏屋氏の企画力と構成力が世界に認められた証と言えます。

長年にわたり東京国立近代美術館で培った経験と実績、そして国際的な活躍が評価され、藏屋美香氏は2020年、横浜美術館の館長に就任しました。これは、日本の美術館界における女性リーダーの一人としても注目される出来事です。館長として、コレクションの拡充、教育プログラムの充実、そして国内外に向けた魅力的な展覧会の企画などを通じて、横浜美術館をさらに発展させるべく尽力しています。キュレーター、研究者、教育者、そして美術館運営者という多様な視点を持ち合わせる藏屋氏の活動は、日本の美術界に多大な影響を与え続けています。

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