薄茶器

薄茶器：茶道の繊細な世界を支える容器

茶道において、薄茶器は薄茶を点てるための重要な道具です。濃茶を点てるための陶器製の茶入とは異なり、薄茶器は一般的に木製漆塗りの蓋物容器を指します。しかし、棗（ナツメ）も薄茶器の総称として広く用いられており、その歴史や種類は多岐に渡ります。

薄茶器の種類

薄茶器には様々な種類があり、それぞれに特徴があります。代表的なものを挙げると、

頭切（ズンギリ）： 形状や材質に特徴のある薄茶器。
薬籠（ヤロウ）： 薬を入れる籠を模したデザインの薄茶器。
茶桶（サツウ）： 桶を模した形状をした薄茶器。
金輪寺（キンリンジ）： 後醍醐天皇の創案という伝説を持つ由緒ある薄茶器で、茶会では高く評価されている。
中次（ナカツギ）： 中継ぎという意味を持つ薄茶器。
雪吹（フブキ）： 雪を吹くような形状の薄茶器。
棗（ナツメ）： 現在最も一般的な薄茶器。

これらは、材質や形状、そして歴史的背景などから分類されています。それぞれの薄茶器は、茶道の侘び寂びの世界観を表現する上で重要な役割を果たしています。

薄茶器の歴史

棗が登場する以前から、頭切、薬籠、茶桶といった木製の茶器は存在していました。これらの茶器は、棗よりも古くから『茶会記』などの文献に登場しており、茶道において薄茶器として用いられていたことがわかります。特に金輪寺は、後醍醐天皇の創案という伝説を持ち、高い格式を持つ薄茶器として知られています。

棗が薄茶器として広く用いられるようになったのは、江戸時代になってからと言われています。それまでは、濃茶と薄茶の区別が明確ではなく、同じ容器で濃茶と薄茶の両方を点てていたと考えられています。茶器に残った茶を飲むことから薄茶が生まれたという説もあります。

棗の起源については、村田珠光に塗師の羽田五郎が納めたものが最初とされていますが、史料による裏付けがなく、疑問視する研究者もいます。確実な記録としては、『天王寺屋茶会記』に記されている永禄7年（1564年）8月20日の津田宗達の茶会で用いられた例が挙げられます。これは、珠光の時代よりもかなり後世の出来事です。

安土桃山時代頃までは、現在の濃茶と薄茶という区別は明確ではありませんでした。そのため、これらの木製の茶器は、当初は濃茶を点てるためにも使われていたと考えられています。

薄茶器と茶道の文化

薄茶器は、単なる茶を点てるための容器ではありません。その形状、材質、歴史、そして使用する銘木などは、茶道の侘び寂びの世界観を深く反映しています。茶器一つ一つに込められた職人技や、歴史的な背景、そして茶会における役割などを理解することで、茶道の奥深い文化に触れることができます。

茶道は、単に茶を飲む行為を超えた、日本文化を代表する精神文化です。薄茶器はその精神文化を体現する道具の一つとして、茶道の歴史と文化を理解する上で欠かせない存在です。 銘木を用いた高価な薄茶器も存在し、それらは茶道の歴史と文化を象徴する貴重な品々として大切に扱われています。

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* 津田宗達

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