藤井厚二

藤井厚二に関する詳細

藤井 厚二（ふじい こうじ）は1888年12月8日に広島県で生まれました。彼は日本の建築家および建築学者として知られ、特に建築環境工学の分野において先駆的な存在でした。東京帝国大学工科大学を卒業し、建築の道を歩むことになります。

藤井は、広島県福山市で酒造家と金融業を営む家庭に育ち、恵まれた環境で学びました。福山中学校を経て第六高等学校に進学し、1913年に東京帝国大学工科大学を卒業後、竹中工務店に入社しました。そこでは、大阪朝日新聞社をはじめとする多くの建物の設計に関わりましたが、1919年に退職。彼はその後、約9ヶ月間にわたって欧米を巡り、この旅行を通じて環境工学に対する興味をさらに深めました。

帰国後の1920年、藤井は当時の同郷の友人であり、建築家の武田五一から招かれ、京都帝国大学工学部建築学科の教授となりました。赴任してからは京都府大山崎の山手に広大な土地を購入し、そこに自邸を4回建築しました。この独自の取り組みを通じて、彼は日本の風土に適した住宅設計の手法を追求しました。

その結果、1928年には「聴竹居」という名の住宅が完成しました。これは木造平屋の形式を取り入れながらも、現代的な生活ニーズに応える設計がなされており、内装には和と洋の要素が巧みに融合されています。特に、自然換気を可能にする通風孔や、日本の気候に配慮した設計が施されており、近代住宅建築の佳作として広く評価されています。聴竹居の設計は、藤井の建築環境工学へのアプローチの真骨頂を示しています。

彼の業績は近年になって再び注目を浴び、多くの建築専門誌や関連書籍でも取り上げられるようになりました。また、藤井は満蒙移民住宅についての関心も持ち、日本学術振興会に参加し、居住問題に対しても尽力しました。さらに1936年には、弟子で後に建築環境工学の大家となる前田敏男を満州医科大学に送り込んで研究を促進しました。

趣味にも非常に積極的で、茶道や華道に親しみ、陶芸やボートにも熱中していました。彼の敷地には茶室や陶芸窯が設けられ、住まいに美的センスを反映させていました。洋服のテーラーメイドには神戸の中国人テーラーを利用し、和服は日本橋から取り寄せるなど、細部にこだわったライフスタイルを送っていました。建築においてもその美的志向が色濃く表れており、特漉きの和紙を使った自著も公開しています。この情熱は、デザインや建材の選定にも大きな影響を与えました。

残念ながら、藤井は1938年に49歳という若さで生涯を閉じましたが、彼の足跡は京都を中心に残る約50件の作品からも感じられます。彼の名誉を称え、京都府建築士会では藤井厚二賞が設けられ、彼の業績を称賛し続けています。藤井厚二の影響は今後も、多くの建築家にとっての指針となることでしょう。

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