藤井清孝

藤井清孝（ふじい きよたか）氏は、1957年2月10日生まれの日本を代表する実業家です。現在は、がんや認知症といった重篤な疾患の早期発見・診断技術、および関連する薬剤開発のためのバイオマーカー探索技術やサービスを提供する、アメリカ合衆国カリフォルニア州に本社を置く企業、REALM IDxの取締役会長を務めています。

REALM IDxは、遺伝子診断分野の大手であるアンブリー・ジェネティクス社や、神経科学領域の画像解析で高い実績を持つインビクロ社などを傘下に収めており、社名のIDxが示すIntegrated Diagnostics（統合診断）の通り、遺伝子情報、病理データ、画像診断結果などを包括的に分析するデータプラットフォーム構築への志向を示唆しています。この取り組みは、現代の医療における診断精度の向上と、個別化医療の発展に大きく貢献するものとして注目されています。

兵庫県神戸市に生を受けた藤井氏は、難関として知られる灘高等学校を経て、東京大学法学部を卒業しました。大学卒業後、コンサルティングファームであるマッキンゼー・アンド・カンパニー東京事務所に入社。東大から新卒でマッキンゼーに入社した第一号として、そのキャリアをスタートさせました。

1986年にはハーバード大学経営大学院（HBS）で経営学修士（MBA）を取得し、その後、ニューヨークの投資銀行ファーストボストンに入社。ここでは、メディア、不動産、ホテル、レコード会社など、多岐にわたる業界の国際的な大型M&A案件を数多く手がけ、その手腕を磨きました。ルパート・マードック氏によるメディア企業買収、三菱地所によるロックフェラーセンター買収、フォーシーズンズ・ホテルによるリージェントホテル買収、サントリーによる英国企業との合弁設立、EMIによるヴァージン・レコード買収など、歴史的な取引に深く関与しました。

帰国後、ブーズ・アレン・ハミルトンの取締役副社長を経て、40歳で半導体設計ソフトウェア企業のケイデンス・デザイン・システムズの代表取締役社長に就任（1997年）。その後、ビジネスソフトウェア大手のSAPジャパン代表取締役社長を2000年1月11日から2005年7月31日まで務めました。SAPジャパン時代には、在任期間中には売上を約3倍に拡大させ、日本の主要企業のおよそ7割が基幹システムとしてSAP製品を導入する実績を達成するなど、日本市場でのSAPのプレゼンス確立に大きく貢献しました。

さらに、製薬業界のクインタイルズ・トランスナショナル・ジャパン代表取締役社長を経て、世界的なラグジュアリーグループ、LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトンの会長兼CEOであるベルナール・アルノー氏から直接招聘を受け、LVMHパリ本社に入社。その後、ルイ・ヴィトンジャパンカンパニーのプレジデント&CEOに就任し、日本市場におけるブランド戦略を牽引しました。退任後もLVMH本社のアドバイザーを務めるなど、ラグジュアリー業界においてもその知見を発揮しました。

その後も、電気自動車（EV）インフラサービスのベタープレイス・ジャパン代表取締役社長兼アジアパシフィック代表（2008年 - 2012年）を務めたほか、オリンパス株式会社の社外取締役、ヘイロー・ネットワーク・ジャパン株式会社代表取締役社長、ザ・リアルリアル株式会社代表取締役社長などを歴任しました。2016年にはコニカミノルタに入社し、ヘルスケア事業の責任者として同社の医療分野における戦略策定と実行を担いました。

実業家としての活動に加え、教育分野でも貢献しています。英語とフランス語に堪能であり、外交の重鎮として知られるヘンリー・キッシンジャー氏との対談においては、日本人として最も説得力のある英語を話すと高く評価された逸話があります。2014年から2015年にかけては、六本木アカデミーヒルズでハーバード・ビジネス・スクールのケーススタディを英語で教える講座を開講。また、2013年から2014年には九州大学の客員教授として、国際経営に関する講座を担当しました。

私生活においては、アメリカ合衆国マサチューセッツ州出身でジャーナリスト、そして日本外国特派員協会の元会長であるルーシー・バーミンガム氏との間に3人の子をもうけています。長男はロックバンドThe SALOVERSの元ギタリストである藤井清也氏、次女はハリウッドで女優として活動する藤井仁奈氏、三女はタレントの藤井サチ氏です。その後、料理研究家の中村奈津子氏と再婚しています。

主な著書として、『グローバル・マインド』（ダイヤモンド社、2009年）、『グローバル・イノベーション』（朝日新聞出版、2010年）があります。これらの著作を通じて、自身の経験に基づいたグローバルなビジネス哲学やイノベーションの重要性について発信しています。

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